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マクロ経済学第88回 ローマーモデル

 今回も、ジョーンズの著書に従って、内生的経済成長論である「ローマーモデル(Romer Model)」を解説してみます。

 ローマーモデルの最大の特徴は、Aが内生化されていることです。しかも、新古典派では、Aは、全生産性要素(TFP)ですが、ここでは、アイデア(新知識や新技術)にフォーカスしています。

 このモデルは、経済発展モデルの一般的・歴史的レジュームも背後にあるといってもいいでしょう。たとえば、以前のコラムでもみたように、A・トフラーの『第三の波』では、情報革命が情報経済社会をもたらすといいました。最近の表現では、第四次産業革命も、情報や知識が経済発展の主要なエンジンとなっているとみます。

 今回は、その知識の種ともいえるアイデアを定式化することが目的です。

 

 第一式のAは、一定期間内でのアイデアのストックまたはアイデアの数です。δは、新しいアイデアの発見率のことであり、LAは、アイデアの創出に従事している労働者数を示しています。よって、アイデアの増分は、アイデア発見率×アイデア創出者で表されています。

 ここで、労働者を2つに分けます。それが第二式で、アイデア創出者(研究者)と産出者(生産者)で、LAが、アイデア創出者で、LYが産出者です。

 第三式は、φ>0 、であれば、過去のアイデアの蓄積が研究開発の生産性を高めることとなり、φ<0、であれば、アイデアの蓄積が生産性を下げ、φ=0、であれば、アイデアの蓄積と生産性は関係がないことになります。

 第四式は、一定期間のアイデアの創出は、アイデア発見率×研究開発者数×アイデアのストックの積となっていることを示しています。ここで、λ<1のときは、研究者の研究の重複により実質的に研究者が減少していることを意味し、φ>0のときは、知識の正の外部性が発生していることを意味します。他の言葉で言い換えると、同じような研究は、研究の無駄が生じ、結果、生産性が落ち半面、知識のストックは他の研究者に良い影響を与えることもあるということです。ここでは、λやφの値がどうであるかによって、新しいアイデアの創出量が決まるということが分かります。

 第五式は、新古典派経済成長理論とローマーモデルのどちらも、均等成長上では、一人当たりの産出も資本形成もアイデア形成も同じ比率で成長していることを示しています。

 第六式は、均等成長下におけるアイデア成長率は、分子が、アイデア発見率×アイデア創出者(研究者数)であり、分母が、アイデアのストックとなっています。表現を変えると、一アイデアあたりのアイデア創出可能性ということになります。

 これが、ローマーモデルとなりますが、第六式のλが1で、φが0であれば、第七式が導けます。この意味は、アイデア成長率は、アイデア発見率、すなわち、研究者の努力水準が変わらなければ、研究者数と比例するということです。これとは反対に、研究者数が変わらなくても、新しい知識や技術や着想や技法が創造される確率が高まれば、アイデア成長率は向上するということです。

 総括すると、ローマーモデルは、アイデア(知識)が、経済成長を持続的に発展させる成長のエンジンと考えているということです。ただし、研究者の研究の重複による新アイデアの減少面と、正の外部効果(スピルオーバー効果)が発生することによる増加面の両方が、どのように純の経済成長をもたらすかが大きな問題であるともいえます。

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