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第15回 水とダイヤモンドのパラドクス

 市場の見方を何回かお話ししましたので、有名な経済学問題(かつてのテキストにはよく出ていた例題)を解いてみましょう。

 それは、タイトルにあるように、「水とダイヤモンドのパラドクス」です。

 水は、すべての生き物に必要不可欠です。人間の生活や生産においても、水ほど重要な財はありません。すべての命にかかわっているのですから。

 しかし、水は、日本ではきわめて低価格です。お風呂やトイレに使う水量はきわめて大量ですが、使用料金は安価です。それに対して、ダイヤモンドは、宝飾品の代表的素材ですが、人間生活の生死を左右するほどではないでしょう。にもかかわらず、きわめて高価なのはどういうことなのか、という問いです。

 ここでの解答は、もちろん、ミクロ経済学的な表現を使ってくださいという条件付きです。

 解答は、「市場価格(market price)」は「需要と供給によって決定する」

というものです。

 その財が本質的に美しいとか、ありふれているとかの理由ではなく、あくまでも需給によって決定するとみるのです。

 まず、水は、日本では、大量に存在します。よって、供給量は、きわめて多いのです。まさに、瑞穂の国ですね。それに対して、需要も大量です。日本人は、水をまさに湯水のごとく使ってきました。しかし、需給関係によって、低価格なのです。市場の図で表すと、右下の方です。自身で作図してみてください。

 それに対して、ダイヤモンドは、需要はそこそこでしょうが、圧倒的に供給量が制限されているのです。いくつかの世界的なシンジケートによって、ダイヤモンドの供給量がコントロールされているのです。すると、供給量は、市場の図では、左の上方に位置します。ここでの均衡点は、また、左上方でしょう。すなわち、高い価格が形成されるのです。

 ここで述べたように、市場論における価格形成は、需要面だけでもなく、供給面だけでもなく、あくまでも需給によって決定されると考えるのです。

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