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第16回 ボランティアのパラドクス

 すでにお話ししましたが、ミクロ経済学では、市場を使って、「資源の最適配分」は実現できるのですが、所得の配分は理論的にはできません。そこで、政府が、公正・公平の観点から、所得の再配分を実施します。具体的には、富裕層には高率の税金を課し、貧困層には非課税として、所得の再配分をします。「福祉国家(welfare state)」は、政府の関与として実現するのです。ただし、どの程度の福祉サービスを提供すべきかは、価値の問題でもあり、なかなか万人の合意には至りません。それと連動して、「大きな政府」か「小さな政府」を選択すべきかも、どの国も非常に難しい判断を迫られています。なぜなら、どの国も一様に、財政が悪化しているからです。この概念も曖昧なのは、二者選択の問題ではなく、程度問題ともいえるのです。先進国のなかで、福祉国家を否定することは基本的に出来ないからです。

 日本では、日本国憲法第25条で、生存権を明記しており、他の社会権とあいまって、福祉国家は基本的に制度としてビルトインされているのです。

 そこで、ボランティアが新しい福祉の担い手として期待されています。

 ここでは、次の課題を考えてみてください。

 古紙回収の事例です。古紙回収は、資源の再利用であり、森林の保護にも役立っています。そこで、初等教育などで、ボランティア活動の一貫として、子供たちに呼びかけて、積極的に古紙を回収しています。しかし、古紙の供給量が過大となると、需給バランスが崩れ、古紙価格が低下します。最悪のケースとしては、回収業者の採算が合わなくなり、結果、業者が減り、古紙回収ができなくなることも考えられます。

 この状況を、市場のフレーム図のなかに、需要曲線と供給曲線を書き込みながら、シミュレートしてみてください。

 さらにこの課題は、経済理論と経済政策の両方の考え方が必要な問題なのです。経済学は、なんのためにあるのかという問いは、これまでも見てきましたが、政府(地方自治体)に対して有効な経済政策が提示できることは望ましいことです。

 ちょっと難しい問題ですが、考えてみてください。

 回答はのちほど。

 

 

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