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第28回 コースの定理

 外部性の解消のためには、政府による関与が必要であることは前回みました。いろいろな関与がありますが、主に、課税と総量規制があります。

 しかし、ノーベル経済学賞に輝いたコース(Ronald H. Coase)は、当事者どうしの「交渉」によっても、外部性問題は解決するという理論を提唱しました。それが、「コースの定理」です。

 コースの定理とは、「当事者間で交渉コストがかからなければ、どちらに法的権利を配分しても、同じ資源配分がもたらされ、かつ、それは効率的である」という外部性に関する定理(法則)をいいます。

 この定義はちょっと分かりづらいので、市民側と企業側の2つの立場で、資源配分問題を考えます。

 まず、市民側に、環境に関する法的権利がある場合、企業側は、市民側に、市民の損害を賠償します。市民の損害が支払われればそれはそれでひとつの解決です。ただし、これまでの被害と今後の被害などの程度や範囲などをどう判定するのかはなかなか難しい問題です。

 つぎに、企業側に、環境に関する法的権利がある場合を考えます。たとえば、先に企業側が操業しているのにも関わらず、企業(工場)の近くに住宅地が開発され、住宅がたった場合、すでに操業していることが分かっていたのですから、市民側の主張は通らないかもしれません。また、民法でいう受忍限度内の公害(それゆえに違法ではない)の場合も企業側は操業する権利を持ちます。このときに、市民側が、企業側に生産の制限をしてもらって、不快さを軽減することがあります。その生産の制限分を市民が補償するということです。企業側も、補償の額が生産の制限分よりも大きければ、受け入れることは合理的です。

 このように、政府の関与がなくても、当事者同士の交渉によっても、外部性問題は解決できるという理論が、コースの定理です。

 ただし、交渉にコストがかかる場合は、完全には実現できません。

 これに対して、裁判所に提訴するということもあるでしょう。ただし、こちらの場合も、決着をつけるには長い時間がかかります。

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