第36回 完全競争市場下の収入
これまで、市場分析を主に「余剰概念」を使って考えてきました。その後、市場が失敗する場合を、「外部性」と「公共財」とで論じてきました。
ここから数回にわたって、完全競争市場における収入と費用の関係をみていきます。この部分は、「生産者の行動」の部でも話が出たかとは思いますが、今後、不完全競争市場を考えるときには、費用論が中心となりますので、復習も兼ねてここでみていきます。
完全競争市場の場合、価格は、需要と供給で決定されるとすでに何度か述べました。その価格形成に関して、売り手も買い手も多数存在しているので、影響力はないか、ごく小さいと考えます。むしろ、市場で決定した市場均衡価格を所与として受け入れるのみの存在であると想定します。これを「プライステイカー(価格受容者)」といいます。
これによって、図表1のように、生産量(販売量)が増えても、価格は一定といえます。
これをもう少し解説すると、一中小企業にとって、価格は変えられないということです。もっと高い価格にしたくても、理論上は市場が受け入れてもらえないのです。ただし、現実の経済では、「一物一価」にならないのはすでに論じました。
いまひとつは、一定の価格ということは、その価格では売れ続けるということです。もっというと、中小企業にとって、市場は無限であるということです(観念的ですが)。ですから、市場がないということは実のところないのです。10軒や20軒でもまだまだ大丈夫だといえます。多くの市場をみてみると、大きなチェーン店で、1000軒(店)を超えるようだと、市場の制約上成長は厳しくなるようです。ただし、コンビニ最大手は、日本全国で2万店くらいあります。しかし、この場合は、ここでいう完全競争市場ではなく、後日考える寡占市場といえます。
つぎに、価格(P)が一定ということで、収入曲線は図表2のようになります。
価格が、一定(定数)なので、それに生産量(販売量)Qをかけたものが収入となります。
なお、収入曲線(TR)は、直線なので、「平均収入」も「限界収入」も同じものとなります。図表でいえば、Pの傾きと同じになります。