第78回 余剰概念による自由貿易の利益
ここから3回にわたって、これまでみてきた「余剰論」をつかって、「自由貿易の利益」や「保護貿易問題」や「補助金の効果」を分析します。ですから、これまでのミクロ経済学の市場論の応用を考えているといえます。
まずは、自由貿易の利益を考えます。
図表のD曲線は、ある財に関する国内の全体需要を示しています。S曲線は、生産曲線でした。ここで、貿易が行われる前には、需要と供給によって、均衡点Eができました。その場合の均衡量は、Q1で、均衡価格はP1です。また、この場合の消費者余剰は、「AEP1」の三角形の面積です。生産者余剰は、三角形「P1EC」です。総余剰は、その合計ですから、三角形「AEC」です。
ここで貿易が行われたとします。ここでの財の国際価格がPwとします。必ずしも国内価格より国際価格の方が低いとはいえませんが、普通、貿易(輸入)をするときには、価格が安いのものを輸入する場合が多いと考えれば、国際価格が低い想定は一般的でしょう。
国際価格 Pw の場合、国内消費量は、Q2となります。なぜなら、価格が低い分、消費が拡大したと考えられるからです。しかし、価格が低いので、生産者の生産量はQ3となります。
では自由貿易が実現した場合の余剰の変化をみてみます。
消費者余剰は、三角形「AEwPw」となります。それに対して、生産者余剰は、三角形「PwBC」となります。これによって、総余剰は、三角形「AEwBC」となります。
これから分かることは、消費者余剰は拡大し、自由貿易の恩恵を得ますが、生産者の余剰は小さくなっているので、生産者には不利益が生じていると考えられます。
結果、自由貿易の利益は、増加した余剰である三角形「EEw B」であるといえます。