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第12回 e-マーケティングとは

 2019年9月1日から、ミクロ経済学(基礎編)にかえて、「e-マーケティング」を書いていきます。

 このai-colab.com内のコラムのタイトルは、「Eビジネス」ですが、e-マーケティングは、その一部でもあるので、新しいタイトルを立てずに、ここで書き進めることとします。また、ここで既述しているコンテンツは、その基礎にもなると考えるからです。

 ミクロ経済学と比べると、この科目(テーマ)は、いろいろな面で真反対なので、それから、論じていくことで、本科目の特徴をお知らせできればと思います。

 まず、ミクロ経済学は、様々な理論を取り込みながら、250年かけて体系化・総合化していきました。概要は、「ミクロ経済学」のコンテンツをお読みいただければと思います。

 これに対して、e-マーケティングは、生まれて間もない赤子のような存在です。Eビジネス自体も、歴史も、大した定義もないので、いつ誕生したかは定かではありませんが、この言葉が生まれたのは、やはりインターネットの商用利用が開始された当たりといえるでしょう。ということは、1990年前後といえるかもしれません。もちろん、この分野の本家は米国といえますが、日本はこの分野では数年遅れるのが常なので、日本語として生まれたのは、その前後といえるでしょう。

 さらに、e-マーケティングにいたっては、2000年にはいってからでしょう。筆者が所属している大学院の前身ができたのは、20年弱前ですが、設立認可権をもっている省に提出した講義名は、「電子商取引論」でした。それが、あまりにも一般化したことと、電子商取引それ自身というよりは、よりマーケティング的要素や技術が次々に生み出されていったこともあり、数年前に講義名を改名しました(もちろん内容も一新しました)。ということは、少なくとも筆者の知る限り、20年前には、この言葉はなかった(または一般化していない)と思います。と同時に、米国では、1999年から2000年にかけて、日本では2001年あたりに、ドットコムバブルやネットバブルと呼ばれたものがはじけて、インターネット関連ビジネスの苦難の時期が数年続きました。しかし、コンピュータの演算処理速度、通信速度、ストレージの巨大化など一貫して進化し続けました。それは、ハードウエアおよびソフトウエア(ミドルウエアも含めて)の発達のお陰ですが、それを基盤として、インターネットとモバイルの普及と低価格化で一気に、ネットビジネスは復活を遂げ、その中から、いまの「GAFA」が、情報経済圏の覇者として君臨するようになりました。

 e-マーケティングに話を戻すと、EC(電子商取引)の規模の拡大と普及により、そのネット広告が軌を一にして大成長を遂げました。と同時に、いわゆるSNSも流行し、いまではネット広告の柱の一つとなっています。これは、単なるポータルサイトや検索サイトの広告を超えて、コミュニケーションのなかにコマーシャルビジネスが入っていくことになりました。ですから、ソーシャルメディアとして、SNSの利活用も考察対象に入ります。

 また、ECは、利用者(顧客)の行動履歴が分かるために、それに対応したマーケティング活動も盛んとなりました。その延長線上に、いまのCRMやMA(マーケット・オートメイション)があります。

 さらには、画像、映像、ゲームなどといった広くいえばコンテンツも大量に生産され、流通するようになりました。こちらの面でいえば、「コンテンツ・マーケティング」といえます。人々の耳目を集め、自サイトに誘導するためにはコンテンツの存在は大きいといえます。この中で、さらに、動画の重要性がより増しており、それは「動画マーケティング」と称されます。

 また、すでに述べたこととも重複しますが、モバイル(いま日本ではスマホに言い換えられていますが)が圧倒的に重要な情報ツールとなっています。これからみたマーケティングは、「モバイル・マーケティング」といえます。

 さらには、IoTやAI、ビッグデータなどが、情報技術ないしはデータオリエンティッドなビジネスと結び付いています。

 また、これらを包摂しながら、「つながる経済」や「シェアリング経済」や様々な「ICTビジネス」が進化・拡大中です。

 最後に、リアルなビジネスとの関係でいえば、ICTは、これらとネットビジネスとの融合やリアルビジネスの支援に大いに有効性を発揮し始めています。

 これを包含する講義が、すくなくとも筆者が考える「e-マーケティング」です。あまり広義に捉えすぎると、コアが不分明になったり、Eビジネスとの差異がなくなるようにも思いますが、ここでは、自由自在、融通無碍に、議論を展開するつもりです。

 このように、マーケティング分野へのICTの利活用を考えるのが、e-マーケティングなのですが、このマーケティングは、学問的には、経営学の範疇です。経営学は、経済学と比して、学問の歴史は圧倒的に短く、理論化の水準も大きな差があるといえます。しかし、実務やリアルビジネスへの貢献という面では、こちらのほうが有用性は高いといえます。ですから、e-マーケティングの講義では、今まさに何が起きており、何がタスクで、そのソリューションに貢献するのであれば、学問的厳密さは度外視して、どんどんと取り入れていこうと考えています。その意味でも、ミクロ経済学とは真逆であるといえます。

 しかも、この分野の概念(コンセプト)や用語(ターム)などの生成と消滅はあっという間です。刹那的といってもいいかもしれません。ちょっと流行りそうな、または流行っていても、ちょっと時がたつと、陳腐化または死語化します。それでも前進し続けているのがこの世界なので、それを恐れることなく、言い方はよくないかもしれませんが、「野生の思考」でポジティブにいきたいと思います。

 とはいいつつも、まったくフレームや指標がないのも心もとないので、まずは、ICTおよび情報通信関連領域の現状把握をしてみたいと考えます。

 その全体像を俯瞰するには、『情報通信白書』(総務省)は必須のデータソースといえます。

 筆者は、情報経済、情報経営関連を調査し始めて、すでに、30年数余年となりましたが、この白書を通覧してみると、この分野の歴史が手に取るようにわかります。

 どんどんとスクラップ&ビルドをしている世界なので、この10年間の白書をみればいいかと思います。もっといえば、この5年間の白書を総覧すると、今と少し未来の情報通信世界が垣間見れると思います。

 そこで、次回から、この5年間程度の白書のデータを利用しながら、情報通信分野の現状と課題、およびそのトレンドを描き出していきたいと思います。

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