マクロ経済学第46回 総供給曲線について
前回は、総需要曲線(AD)を導出しました。
今回は、それと対となる「総供給曲線(aggregate supply curve: AS)」を考えることにします。
このときに、マクロ経済学の2大潮流(学派)であるケインズの理論と古典派の理論では、この総供給曲線の形状が異なっています。
その理論の分岐点は、労働市場が賃金の変動によって、均衡することができるのかという点です。賃金が自由に伸縮(上下)できれば、失業者はいなく、できなければ失業者が存在するということです。
図表1は、古典派の総供給曲線を示しています。
古典派では、労働市場はつねに均衡しているとみるので、失業者は存在していません。なので、総供給曲線は完全雇用国民所得(Yf)水準で垂直な形状となっています。この場合は、物価に影響されないことも意味しています。
図表2は、ケインズ派の総供給曲線を示しています。
古典派に対して、ケインズ派は、かならずしも労働市場は均衡しないと考えます。その理由は、「賃金の下方硬直性(downward rigidity of wage)」が存在し、賃金が下げどまりするためです。この労働市場論はまた後述しますが、賃金が下がらないと、労働力は過剰供給となり、その過剰分ほど失業となります。この場合の失業は、「非自発的失業(involuntary unemployment)」と呼ばれています。しかし、完全雇用国民所得の水準となれば、古典派と同じように、垂直の総供給曲線の形状となります。