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マクロ経済学第54回 メニューコスト理論

 この理論も、価格の硬直性や賃金水準の硬直性の理由を解明するためのものです。

 マクロ経済学もミクロ経済学の基礎に立脚して、理論を構築すべきであるという考え方の代表的なもののひとつが、「メニューコスト理論(menu cost theory)」です。

 商品のメニュー(価格表)を改定することにかかるコストからアイデアをとっています。ある店に何千種類もの商品があって、その価格を毎日書き換えることは大変に時間と労力をとられます。まずそれ自体がコストです。物価水準が変動したり、取引先の部品等の価格が変化しても、いちいち対応することはできません。また、買い手(消費者)にとっても、毎回商品の値段が変わることをよしとしないでしょう。時価という値札を高級料理店でみかけますが、そのような店では値段が気になってしまいます。よって、消費者に安心して購入してもらう意味でも、価格表は硬直的になると考えるのです。

 市場論的にみれば、その店が非完全競争市場のなかにあるといえます。完全競争市場であれば、価格は市場メカニズムで決定され、その参加者は価格を所与として受容するしかないからです。

 メニューコスト論が当てはまる市場様式は、寡占か独占的競争ということになります。

 寡占ですと、様々な寡占の理論の適用が考えられますが、たとえば、屈折需要曲線の理論ですと、ライバルが価格を下げれば、自身も価格を下げざるを得ませんが、双方に痛手を受けます(本コラムミクロ経済学第51回参照)。また、ライバルが価格を上げると自身は価格を据え置くと需要が増えますが、相手はそのような手を打ってこないでしょう。結局、価格が硬直化するということです。

 また、独占的競争状態(本コラムミクロ経済学第53回参照)であるとすると(ほとんどの現代の商品はこの市場に近い)、ある程度の独占性は得られるとともに、多数のライバルも同じような商品を提供しているので、その独占性は長期的には崩れます。この場合も、ある程度の価格影響力はあるので、価格は大きく変動しないことになります。

 このように、メニューコスト理論によれば、商品の価格があまり変わらないことになり、それに連動する形で賃金水準も大きく変わらなくなるとみます。 

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