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マクロ経済学第65回 資料編その4

 今回のテーマは、企業の新技術の導入についてです。また、総理府による『年次経済財政報告書・令和元年度』から図表を引用して、コメントいたします。

 経済成長論は、この資料編の後にしますが、先進各国の成長の源泉は、労働人口の増加やモノ資本の増大でもなく、広い意味での技術革新が中心となっています。

 図表1は、我が国の企業における新技術の取り組み状況を示しています。

      図表1 新技術への取組状況

[総理府・『年次経済財政報告書・令和元年度』より引用]

 ただし、ここにでているのは第四次産業革命の中心と目されているICT関連のみです。

「第四次産業革命(Fourth Industrial Revolution; 4IR)」とは、第一次が蒸気機関による生産の自動化、第二次が電気を中心とした機械生産化、第三次は今に通じる情報通信による変革、第四次は今後に来るであろうというもので、人、企業、社会にICTが組み込まれることによる産業・経済の変革をいうとされています。ただし、これはまだ到来していないので、論者によって内容は異なるといえますが、「超情報経済」といいかえることもできます。ただし、社会の変革としては、Society5.0という場合の方が多いと思います。今のところは、AI・IoTとBigdataと高度ネットワークの同時発展状態と考えればいいかと思います。

 そこで、AIの活用を示しているのが図表1です。

 このAIの活用の有無とその深度・程度はまさに千差万別ですが、ここでは、とにかく、導入してみたということでしょう。日本で第三次AIブームが起きたのは2018年でしたので、比較的早く導入がなされたといってもいいかもしれません(ただし、第三次AIの技術の確立は2006年あたり(ディープラーニングの提唱時期)なので、あまり新しいともいえませんが)。

 第二は、ビッグデータ・IoTの活用ですが、これは14%程度となっています。これもどのようなレベルでの活用なのかによって企業差は大きいと思われますが、昨今、この2つのキーワードは聞かない日がないくらいなので、企業が本格的に取り組みを始めたということでしょう。また、ビッグデータ分析を専門に扱うICT企業も出ているので、その間接的な利活用も今後は増えていくと考えられます。

 第三と第四は、一体ともいえるので、まとめてコメントします。ICTの責任者は、「CIO(Chief Information Officer)」と呼ばれていて、米国での歴史は古いですが、日本では名称こそあれ実態としてどのくらい機能しているのかは議論のあるところです。図表1でも数%程度にとどまっています。また、ICTに対応した組織改編を一言でいえば、「DX(digital Transformation)」といえます(ただしこの方がより広義の概念ですが)。この両者は、コインの裏と表の関係ともいえ、両者相まって効果を発揮しますが、両者がどの程度そろっているのかは分かりません。この究極的な形は、「データセントリック組織:データ駆動型組織」ですが、トップ層が企業内のすべての情報を把握し、中間層が作業層の情報を完全に捕捉し、作業層はすべての作業プロセスの情報化を行っている組織のことです。

 最後が、上記を含めた新技術と導入・活用に関する中長期的なプランニングです。

 図表2 RPAへの投資について

(左図は業種別で、右図は規模別)

[総理府・『年次経済財政報告書・令和元年度』より引用]

 図表2は、RPAの投資に関してです。「RPA(Robotic Process Automation)」とは、「これまで人間が行ってきた定型的なパソコン操作をソフトウエアのロボットにより自動化するもの」(総務省『情報通信白書』の定義)です。

 図表2の左図は、RPA導入の業種別を示したものです。金融業界がこの分野では進んでおり、ついで、サービス業と製造業が続きます。前回(第64回)の人手不足の業種は、まさに、左図のRPA導入下位の卸・小売・外食産業です。この業種は、設備投資が少ないという結果でしたが、図表2の左図でもそれを違う形で示しているといえるでしょう。図表2の右図は、規模別の取り組みを示していますが、大規模企業ほど取り組んでいることを示しています。

 総括しますと、まず、労働生産性を高めるような設備投資が必要であるということです。ただし、この設備投資も、モノづくりのためのコスト削減的な投資というよりは、IoTやAIや様々なコミュニケーションツールの導入と組織化といえます。

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