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AI経済学 第10回 新しいフレームの導入

 前回は、ミクロ経済学における需要関数の移動について、簡単なシミュレーションを試みました。

 ちょっと考えてみると、AI経済学という分野(学問)があるわけでもなく、ミクロ経済学的にアプローチをしなければならないわけでもありません。

 このコラムでは、AIが個別企業や組織、ひいては国家経済に対して正の影響をいかに多く生み出せるのかを考えることなので、様々な経済・経営学の知見を総合的に導入してみたいと考えます。

 そこで、前回の需要関数をここでは、経営学のなかのブランド論、より正確にいえば、D・アーカーの3つの便益論から考えてみたいと思います。

 彼の3つの便益とは、ひとつは「機能的便益」、2つめは「情緒的便益」、3つめが「自己表現的便益」です。最後の便益(要因)は、顕示的便益とも、誇示的便益と呼ばれるものです。

 このような3つめの便益の議論は、100年以上前に、T・ベブレンによって主張されました。

 確かに、腕時計一つをとってみても、時を知るためならば、1000円のデジタル時計で用が足せますが、ひとに見せびらかすために(それだけではないでしょうが)、100万円の高級腕時計をはめる人もいます。ざっと1000倍以上の金額を払っているといえます。

 そこで、このアーカーの3つの便益論にもとづいてシミュレーションをしたのが、図表1です。

 もっとも需要曲線の低位なものは、ここでは青色の線で、機能的便益を示し、中位の線(オレンジ色の線)は、情緒的便益を示し、最上位が、自己表現的便益が加わった線(緑色の線)として描いています。

 このように、人々の便益が単純に加算的であるのか、どの程度の移行を示すのか、さらには、財の種類やブランドによっても異なるのではないかなどの疑問が考えられます。

 これらは実証してみなければ何とも言えませんが、実証するプロトタイプとしてはありそうな図式です。

 これに関しては、かつてのゼミ生が実証しているので、のちに、実証分析もお示ししたいと思います。

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