AI経済学 第13回 AI的費用関数のモデル
企業活動において、費用問題はもっとも重要な問題のひとつです。
ところが、ミクロ経済学では、費用関数は、きわめて簡素に想定され、定義されています。
標準的なテキストでは、総費用は、固定費用と可変費用(変動費用)の和とします(当コラムミクロ経済学第37回参照)。
また、短期費用概念と長期費用概念に分け、前者は、固定費が変わらない状況をいい、後者は、固定費用も変化し、変動費化した場合を考えます。
ここでも、必ずしもミクロ経済学のロジックを取らず、いわば、AI的な費用関数を考えてみたいと思います。
ただし、ミクロ経済学における費用関数の形状は、逆S字を取ると想定することが大半です。これは、生産の初期段階では、費用はむしろ効率的となり(限界費用が逓減する)、その後、費用は非効率的になるとみるからです(限界費用が逓増するとみます)。かならず、そうなるかどうかは、企業が属している産業や業態、および個別企業の都合でいろいろなことが考えられますが、一般的には、逆S字型の曲線とみることはもっともらしいといえます。
この逆S字型に近似している関数は、ロジット関数とみることができます。
この関数を簡略に説明すると、確率Pで生起する現象Aにたいして、Aが生起する確率と生起しない確率の比(オッズとよぶ)を、対数にとったものです。
数式で表すと、
f(p) = log (p / (1 – p))
となります。
この関数をPython言語で描画すると、図表1のようになります。
この場合、Pが0に漸近すると、-∞となり、Pが1に漸近すると、+∞となることを意味しています。Pが0.5のときには、ロジット値は、0となります。
これはあくまでも理念モデルですが、逆S字型関数の本質は表れています。