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第23回 政府の役割と市場の失敗

 政府が経済分野になんらかの介入(関与)をすると、社会の富を示す総余剰は、必ず小さくなることをみました。

 そこで、自由市場主義者は、「小さな政府」を志向します。しかし、政府がまったくない、いわば、「無政府社会」で社会が安定的に存在することはないでしょう。ですから、A・スミスですら、「自由放任主義」(レセフェール)を標榜しながらも、警察や消防や軍事などの基本的公共サービスの提供を政府の仕事として認めました。ラッサールの言葉を使うと「夜警国家」ということです。

 経済領域に絞ると、そもそも市場のルールを誰が決めるのかということです。市場が成立するためには、「所有権の確立」とその保護および「流通の安定性」が必要ですが、それを実現するのは、政府を置いてほかないのです。つぎに、経済ルールに違反したかどうかを監視する役目があります。違反があった場合は、規制や処罰を加えます。ただし、どんどんと変化・進化するテクノロジーや経済社会の状態を、政府が正確に把握することができるのかという問題もあります。まさに、近代経済社会ではよかったものが、現代社会ではそのまま通用することもないでしょう。

 自由市場を守るためには、政府の存在が必要ですが、政府の存在は非効率な資源配分をもたらすというジレンマに根本的に陥っているのです。

 しかし、経済社会には、市場がうまく機能しない領域・問題も存在します。

 それが、次回から議論する「市場の失敗(market failure)」です。

 ただし、「市場の失敗」が存在するために、政府の役割があることをみるのですが、「政府の失敗(government failure)」もあるのです。

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