第57回 規模の経済
企業は、生産要素を使って、生産物(財)を作ります。
このときに、生産要素の投入量と生産量の関係が問題となります。
当コラム第55回では、ひとつの生産要素以外は一定として、生産量がどうなるかを考えました。これは、「生産要素に関する収穫(returns of product factor)」といいます。その場合、古典的な産業では、収穫が逓減するとみました。
ここでは、「規模に関する収穫(returns of scale)」を議論します。すなわち、すべての生産要素を等倍すると生産量がどうなるかを考えます。一般的には、「規模の経済(economies of scale)」といいます。
ところで、生産要素といっても、企業が利用している要素は、きわめて種類が多いのですが、ミクロ経済学では、2つに集約します。そのひとつは、資本(量)であり、いまひとつが、労働(力)です。
そこで、図表を使って、規模に関する収穫を考えてみます。
資本と労働をλ倍したときに、生産量が、λ倍超となる場合を、「規模に関して収穫逓増(increasing returns of scale)」といいます。それに対して、同倍の場合を、「規模に関して収穫一定(constant returns of scale)」といい、λ倍未満の場合は、「規模に関して収穫逓減(decreasing returns of scale)」といいます。
もちろん、規模に関して収穫逓増が生産者にとっては望ましいことは明らかです。費用の増加以上の成果を獲得できるからです。
もし指数関数的に逓増するのであれば、あっという間に、生産規模(販売規模)は巨大化します。急速に成長するICTビジネスなどは、この法則にのって大飛躍を遂げるのです。