第59回 技術的限界代替率
今回は、「技術的限界代替率(Marginal Rate of Technical Substitution:MRTS)」を考えます。
生産者は、資本と労働という生産要素を使って、生産をおこないます。その関係は、ここでは、資本と労働は代替関係にあると考えています。その結果、図表のように、右下がりで、原点に対して凸の形状の曲線となります。
ここで、図表のQ1曲線は、前回論じた「等生産量曲線」(等量曲線)です。すなわち、この上にあるどの点も同じ生産量であることを示しています。ですから、Q1上のP1点とP2点は、同じ生産量です。
しかし、P1点の接線(赤い線)の傾きと、P2点の接線(緑の線)の傾きは異なります。
この接線の傾きのことを、「技術的限界代替率」といいます。定義づけると、「ある生産要素を一単位増加させたときの他方の生産要素の減少分」のことです。等量生産なのですから、ある生産要素を増加すると、他方の生産要素は減少させなければならないのです。他の言葉で言い換えると、「生産要素間の限界代替率」であるといえます。
式で表現すると、
MRTS = ΔK / ΔL ・・・・・・①
さらには、
ΔK / ΔL = MPL / MPK ・・・・②
となります。
①式は、限界代替率であり、②式は、「労働における限界生産力(MPL)」と「資本における限界生産力(MPK)」の比となっていることを示しています。
これらの意味するところは、たとえば、図表でいえば、横軸に当たる労働力を増加していくと、その生産力が逓減することを示しています。図では、先の接線の傾きで表されています。これを、「技術的限界代替率逓減の法則」といいます。もちろん、資本に置き換えても同じことがいえます。