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第55回 生産関数

 ミクロ経済学は、消費者と生産者という2つの経済主体の行動を記述する学問です。

 すでに、企業の費用論は議論しましたが、ここからは「生産関数(production function)」論を何回かに分けてお話しします。

 この社会経済に、財やサービスを供給する経済主体は、企業です。現実の経済では、様々な種類の企業があるでしょうが、ミクロ経済学ではその種類は原則問いません。

 図表1がもっとも簡素な1経済主体の生産体制(構造)を示しています。

図表1 1生産主体の生産体制

 財やサービスを生み出すためには、「生産要素(factor of production)」の投入が必要です。その生産要素のなかには、「固定インプット(fixed input)」と「可変インプット(variable input)」があります。固定インプットは、建物や機械などであり、費用論では、固定費用として考えていたものです。これに対して、可変インプットは、可変費用であり、原材料や光熱費などです。

 これを他の概念で示すと、「資本(capital)」と「労働力(labor)」といえます。

 式で示すと、

 Q = f( K  ,  L )     ・・・・①      Q:生産量 K:資本 L:労働力

 です。

 資本と労働力を組み合わせて、生産物を生み出すということを示しています。

 図表1では、何らかの組み合わせの仕組みや構造が、生産様式であり、生産方法です。関数でいえば、「f」がそれを示しています。より具体的にいえば、資源を組み合わせるノウハウや知識や技術などです。この関数がどのようなものかは、今後議論していきます。

 そこで生み出されたものが、「生産物(products)」です。図表でいえば、アウトプットです。

 つぎに、①式で、資本は固定して考えてみます。

 すると、

 

  

 と式を変形できます。これは、生産量が、労働力(L)のみによって、変化することを意味します。なお、労働力を固定して、資本を変数としても同様な変形となります。

 この労働力と生産量を図示したものが、図表2です。

図表2 生産物曲線

 図表2は、横軸に、労働力(L)をとり、縦軸に、生産量(Q)をとっています。

 「生産物曲線(product Curve:P.C.)」は、図の赤い線です。

 この生産物曲線には、2つの特徴があります。

 その第一は、労働力が増加すると、必ず、生産量は増加するということです。曲線が上昇し続けることを示しています。

 第二は、労働力が増加するにしたがって、生産量の増加する割合が低下するということです。「生産要素である労働力を一単位投入したときに増加する生産量」を、「限界生産物(marginal product)」といいます。労働力の増加にしたがって、徐々に小さくなるので、「限界生産力逓減の法則(law of diminishing marginal productivity)」といいます。なお、図表2では、A点での限界生産力(MPa)が、青い破線の角として表されています。A点は、労働力L1と生産量Q1を組み合わせたときの点で、限界生産力は、その点での「接線の傾き」ともいえます。

 以上の想定は、古典的な産業の労働力と生産量の関係を示しているといえますが、必ずしも、生産物曲線が図表2のようになるとはいえません。労働力が増加することによって、当初は生産性が高まり、その後は、低下するような場合は、S字曲線(ロジスティック曲線)のような形状が適切な場合もあります。

 たとえば、古典的な産業の例としては、農業があります。一定の農地に、農業従事者が増える場合、ひとりあたりの増加分は普通は低下するように思われます。それに対して、工業や複雑な産業では、S字曲線の方がふさわしいといえるかもしれません。

 ここでは、生産関数の最初の議論でしたので、古典的な事例を考えました。

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