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総合システム論 第15回 二項対立的思考

「二項対立(dichotomy, binary opposition)」とは、「論理学で、二つの概念が矛盾又は対立の関係にあること」であり、また、「概念をそのように二分すること」です(「デジタル大辞泉」)。

この考え方は、ソシュールやレヴィ=ストロースなどの構造主義に由来しているという説もあります。

ただし、東洋では、陰陽論があり、「陰と陽」の2つにすべてを分けて考える思考タイプが古代から存在していたのです。天と地、夜と昼、海と陸、明と暗、正と邪、などなど、2項対立的な要素(要因)は、無数に存在します。これによって、複雑な世界も判別でき、世界を詳しく記述できるようになります。

 この2項対立は、分かりやすい分、以下のような根本的な課題も抱えています。

 その第一は、言葉(概念)の意味は、対立する2つの言葉の比較で明らかとなるということです。互いは排他的な言葉ですが、それは「対」で意味をなします。さらに、そのグラデュエーションは、無数にあるということです。たとえば、オズグッド(Osgood, C.)が開発した感情分析や印象分析でよく用いられる「SD法(Semantic Differential Method)」は、様々な2項対立の間に、5つか7つ(いくつでもよいのですが)の程度を設けます。私たちは、何かを好きか嫌いかとか、快か不快かなどと、2項対立的に述べることは日常でもよくありますが、実は、同じ好きでも、熱狂的に好き、大変に好き、まあまあ好き、などのスペクトラムをもっています。

 第二は、2項対立しているという言葉は、すでにある意味をもっていることです。すなわち、「対立している」、「対抗している」ということを示しています。これは、事物の本質的・客観的な対抗要因なのか、政治的・信条的なものなのか、はたまた情緒的・感情的対立をもっているのかは注意が必要です。このことが、より鮮明に表れるのは、政治的投票でしょう。たとえば、2人の候補者からひとりを選ぶときには、その中間はありえません。候補者も違いを出すために、あえて、二者選択的な課題設定をすることがあります。先の候補を選ぶときには、どちらも好ましくない時でも、どちらかを選ぶことは、厳しい選択であり、心の中で、51%対49%という場合もあります。有権者も、そのように投票が分かれることもあります。その場合、勝者はひとりですが、市民の見解はやはり五分五分といえるでしょう。

 この2項対立を乗り越えるためには、長い時間をかけた討論が必要でしょうが、いまひとつは、2ではなく、3や4などといったように、もともとの選択肢を増やすこともあります。投票の件では、棄権という選択肢もあるかもしれません。

 本来、人は、世界認識のために2項対立を使ったのでしょうが、数字自身にも、そのような意味が付与されているとみることができます。まず、1という数字のメタファーは、「はじめ」や「出発」や「絶対」や「完全」という意味があります。2という数字には、「対立」や「対」や「カップル」や「均衡」などの意味があります。3という数字は、「不均衡」や「発展」や「動的」や「止揚」などの意味合いがあるでしょう。ただし、そのような共通認識が、文化人類学的に、古代からあったのか、いまもあるのかは、定かではありませんが、古今東西、あったとみるのは、不自然ではないとみられています。

 新しいアイデアや観念や構想や構造は、2項対立関係を考えるとともに、3項、4項関係もありうると考えるべきでしょう。1とは、「まさにこれだ!」という直感、ひらめきであり、2は、「でも反対もあるな」とか「逆の方が面白い!」などの対抗概念的思考を生みます。さらに、3は、「いっそ飛躍しよう!」とか「また新しい層、次元で考えよう!」などということをもたらします。

 二項対立的思考は、高次の思考のはじまりといえるかもしれません。

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