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AI経済学 第2回 射程

 新コラム「AI経済学」は、あくまでも経済・経営領域において、AIおよびインターネットが果たす役割や可能性、および、経済構造・経営手法をどう変革し、どう経済成長につなげられるのかなどを論じようとするものです。

 しかし、AIという言葉(概念)は、現代のマジカルワードであり、バズワードでもあります。「人工知能(Artificial Intelligence)」は、人が作り出した、人のような知能をもったソフトウエア群の総称です。

 これまでのプログラムと、一線を画すのは、やはり、人間に似た「知能」という点です。単に、高速かつ正確に、データを処理するだけなら、人の耳目を惹くことはないでしょう。人の心を揺さぶることもないでしょう。やはり、人間のような「知性」をもっているかのような振る舞いに、人間は、ある種の畏敬の念や畏怖の感情を持ってしまうのです。

 それもあって、AIは、ある時は過剰に、あるときは過少に評価されます。または人によって評価は異なるのです。

 AIの誕生は、コンピュータとそのプログラムが誕生した時といってもいいかもしれませんが、言葉としての正式な認知は、「ダートマス会議(Dartmouth Conference)」(1956年)からといわれています。そこには、当時すでに著名だった、計算機科学者のJ・マッカーシー(John McCarthy)や、認知科学者のM・ミンスキー(Marvin Minsky)や、情報工学者のC・シャノン(Claude E. Shannon)などが参加して、その会議で作られた提案書の中にAIという言葉が出てきました。

 ということは、AIは、正式な誕生からみても、すでに、65年が経っています。その間、理論的には長足の進歩があったものの、現実的な有用性が少なく、今世紀に入るまではあまり日の目を見ることもありませんでした(もっぱら大学や研究所の中の学術的なアルゴリズム研究にとどまっていました)。

 しかし、第三次AIの登場で、画像認識、音声認識、自然言語処理等が実用化され、規則のあるゲームや様々な課題処理に人間以上の成果を上げるようになって今に至っています。

 一言でいえば、コンピュータがまさに現実的な知的振る舞いができるようになったことで、AIに対する評価が一変して、今のAIブームがまた到来したのです。ただし、評価は大きな期待が伴われることが多いので、また失望も生まれつつあります。それを織り込んだうえでいえば、今の延長線上の技術でも出来ることはかなりあるということです。さらに、テクノロジーは、収穫逓増的・指数関数的に成長発展することを考えると、10年後、20年後には、経済・経営領域に限っても、飛躍的に生産性を上げる可能性は十分に想定できます。

 そこで、AIという資本は、広義の資本(人的資本、金融資本、組織資本、インフラ資本など)とどのように結合して価値を生み出していくのかを今後考えていきたいと考えました。

 本コラム・マクロ経済学の第86回から第89回で、内生的経済成長理論を概観しましたが、この経済成長方程式に「AI要因」を組み込んだらどのような成長がありうるのかを徐々に明らかにしたいと考えています。と同時に、インターネットは、経済経営領域の中にも当たり前のように活用され、新しいビジネスを次々に生み出していますが、労働者のコミュニケーションとネット内の情報流通および蓄積、および情報処理力の向上は、労働者の働き方や組織変革をもたらすといえます。ということは、「インターネット要因」も成長方程式に組み込まれるべきだといえます。

 しかし、AIもインターネット技術も、その普及度、活用度、技術水準、活用方法、既存の資本とのマッチングの最適性などによって大いに効果が異なるといえます。

 そこで、まずは、AIの技術的特徴や、AIによって何ができるのかなどを、次回から記述していきたいと思います。

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