第1回 情報とは
この講義では、インターネットに関する「経済ー経営ー社会」の諸課題を考えていきます。
その第一回目は、情報とはなにかを考えます。
eビジネスとは、ICTを活用したビジネスという面と、ICTそれ自体がビジネスという面があります。前者は、ICTの既存ビジネスへの応用です。既存ビジネスは、農業や林業や水産業のような第一産業もあれば、各種製造業のような第二次産業もあれば、サービス産業のような第三次産業もあります。日本には、およそ400万社程度(休眠会社なども相当あるし、個人事業が入っていないこともありますので正確に数を表すのは簡単ではありません)。その企業が、たとえば、ホームページを開設したり、SNSを利用したり、顧客・製品・従業員データベースを構築したら、このICTを応用したということになります。今の時代、まったくICTや情報関連機器を利用していないということはないでしょう。大事なのは、どの程度、ICT化を進めるかということと、ICTによって企業活動や企業戦略をどう構築できるかでしょう。ICTビジネスというものもたくさんあります。たとえば、情報通信業者がそれです。また、ソフトウエアやシステム開発会社がそうです。さらには、各種のコンテンツ企業もそれです。デジタルコンテンツ市場だけでも、2018年は、13兆円程度となっています。
これらを考える場合の重要なキー概念が、「情報」です。
そこで、これからいろいろな領域や分野で情報概念は異なりますが、それはおいおい議論していきます。ここでは、もっともベーシックな概念を述べます。
まずは、辞書的な常識的な定義をみます(「デジタル大辞泉」から)。これによると、「ある物事の内容や事情についての知らせ」であるとみます。また、「文字・数字などの記号やシンボルの媒体によって伝達され、受け手に状況に対する知識や適切な判断を生じさせるもの」であるとみます。
インターネットには、無数の情報に関する定義が載っていますので、ここでは、この講義により関連する定義をいくつかみます。
第一は、組織との関係を意識したものとしては、「組織化され、伝達されるデータ」(「情報経済入門」ポラト)があります。第二に、価値との関係では、「特定の状況における価値が評価されるデータ」(「情報の経済学と経営システム」マクドノウ)。第三に、制御との関係で、「われわれが外界に適応しようとする行動し、また調節行動の結果を外界から感知する際に、われわれが外界と交換するものの内容」(「人間機械論、サイバネティクスと社会」ウィーナー)があります。第四に、情報の秩序性に注目したものとして、「意味をもつところの秩序ある記号系列」(「組織と情報」北川敏男)があります。
第四の定義をもう少し考えると、情報の階層性がみられます。まずは、未評価な記号・信号としてのデータです。データは、またビッグデータとして、AIのためのデータとして情報以上に利用される概念ですが、ここではこの話は置いておきます。つぎに、評価中のものとしての情報です。狭義の定義といえるでしょう。さらには、知識があります。これは評価済みのものです。最後がインテリジェンスです。ここで出たデータ、知識、インテリジェンスは今後考えていきます。
ここで議論する領域は、個人や組織活動や経営活動や経済活動ですので、先に述べた4つの定義をまとめてみます。
そこで、暫定的ですが、情報とは「個人や組織にとってなんらかの意味や価値があり、状況に適応し諸課題を解決するときに必要な記号やシグナルをいう」と定義づけておきます。