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総合システム論 第22回 脱専門性

 原則として、「専門性(Specialty)」を持つことは、すべての人にとって、極めて重要なことでしょう。

 専門的な教育を受けて専門的な仕事を続けることは、仕事の水準や品質を高めるための基本だからです。

 専門性とは、「限られた分野の学問や職業にもっぱら従事すること、または、その学問や職業」であり、「もっぱら関心を向けた事柄」であると定義づけられます(『デジタル大辞泉』)。また、『大辞林』では、先と同様な定義の後に、「一つのことだけで押し通すこと、一本やり」と付け加えています。

 これらの定義の背景には、近代的科学主義が見て取れます。または、経験主義もはいっているでしょう。この厳しい世界を生き抜くために、専門性を一層追求することは、現代人の必須な事柄です。

 このことからすると、専門性の反対語である「非専門性」は、否定されるべきものとなります。

 ところが、専門バカという言葉があるように、専門があまり役に立たないことがあります。それはなぜでしょうか。これを図表を使って説明しましょう。

 図表のように、専門性は、「専門知識や技能」のように、「A専門」という上部と、「メタ専門性」という下部の両方から、構成されていると考えています。ここでの「メタ専門性」は、専門性を支える「基礎的な思考力」や「人間の理解力」などをいいます。ある、試験に合格したり、資格をとったり、一定の技能を獲得しても、どうも役に立たない、または仕事ができない人は、このメタ専門性が低い可能性があります。Aという専門的知識や技能は、この普遍的で基盤的な思考力によって、はじめて有効な知となると考えられます。

 さらに、新しいB専門を得るためにも「メタ専門性」が大いに役に立ちます。なぜなら、専門的知識は、獲得する手順や理解の仕方はどれも共通していることが多いからです。

 ここですこし具体的な事例から、2つ以上の専門性をもつ意味を考えていきます。

 たとえば、幼児教育用のソフトウエアなりコンテンツを創造・開発するとします。幼児教育は、専門の資格が必要であるし、実務も問われます。この人が、コンテンツを作るにはプログラミングやシステム構築の専門性を必要とします。もちろん、プロのSEほどの力が必要ではないでしょう。プログラミングは専門家に任せることが普通でしょうから。しかし、これまでは、SEなどに仕事を丸投げで依頼していたところに問題があったのです。逆もまたしかりですが、まったく他の知識がないと、優れたソフトウエアは実現しないのです。両者が話し合いながら作り上げるにしても、基礎的な用語や概念に対する共通認識がないと、きちんと意図や考え方が伝わらないことが多いのです。

 まったく同じレベルの専門性を2つもつことは不可能でしょうが、ある程度までの専門性をもっておくことは、仕事や社会が複雑化・融業化している時代には大いに求められるといえるでしょう。

 さらに、キャリアを発展させるためにも、複数の専門をもつことにチャレンジすることは今後大いに求められると考えられます。

 ただし、この専門性は、次回の分業の問題とも大いに関わっています。

 次回もまた、お読みいただければ幸いです。

 

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