第2回 VUCAという世界時代認識
現代の企業経営において、近年、よく使われる言葉に、「VUCA」があります。もともとは、1990年代の軍事用語として使われたとされています。それが、2010年代の経済経営用語として転用されるようになりました。情報経済論において、情報の不確実性や非対称性はもっとも重要な概念なので、この言葉を使って、現代の社会経済の不確実性を考えていきます。
VUCAとは、以下の4つの英語の頭文字をとった造語です。
Vは、「Volatility」を指しています。日本語では、「変動性」と訳されます。経済は、一定でななく、つねに変動しています。勿論、その変動が規則的であれば、予測がつきやすいのですが、その変動が、不規則で、その変動幅が大きくなると予測し難くなります。勿論、為替や株価や物価なども常に変動していますが、その変動の要因が増えたともいえます。あらゆるものが、ダイナミック化しつつあります。その大きなものが、「ダイナミックプライシング(変動価格制)」です。これは、今後、詳細に論じます。
Uは、「Uncertainty」です。まさに、「狭義の不確実性」のことです。この世の中は、なにがどう起きるか、未来は常に不確実ですが、それがさらに大きくなっているとみるのです。
Cは、「Complexity」です。これは、複雑性のことです。かつて、「複雑系経済」という学問分野や概念や言葉が流行りましたが、情報化・ネットワーク化・グローバル化の進展は、社会経済環境をより複雑なものにします。社会経済や組織やシステムの複雑性が増すと、ますます予測がつかなくなるのです。あらゆるものが関係性を深めると、一つの要因が動くと、他の無数の要因に影響が及ぶからです。さらには、影響を受けた要因から、与えた方の要因も影響を受けます。インタラクティブ化によって、因果関係などがきわめて複雑なものになるのです。
最後のAは、「Amviguity」です。これは、曖昧性と訳されます。たとえば、商品がどんどんと多機能化していくと、商品間の判別がつかなくなります。これまでは固定的だった商品カテゴリーが曖昧なものになります。ここに、創造の契機があるのですが、既存の概念、秩序、慣習、制度、言葉などもどんどん両義的で多義的になっています。
この4つの言葉の造語である、VUCAは、現代の経営経済環境の不確実性(広義の概念)を表しています。
1990年代終わりの頃、米国では、New Economy という考え方が唱導されました。情報化・インターネット化が進むと、社会経済の不確実性が解消され、新しい経済秩序やモードがもたらされるとみたのです。当時のFRB議長が事実上容認したということで、多くの賛同者がいましたが、その後、この見方は否定されました。実際、経済の仕組みや様式はいうほど変わっていません。というものの、2015年あたりから、また変容し始めたようにもみえます。これはまた今後述べます。
ここでみるように、むしろ「社会経済の不確実性は増大している」といえるでしょう。
そのような世界経済環境の下、いわゆるGAFAのような「スーパープラットフォーマー」が誕生しているのです。
次回は、超巨大ICTビジネスの情報行動や情報戦略から、この不確実性をもっと考えていきましょう。