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第8回 経験財の探索

 今回は、経験財を考えてみます。

 経験財を一言でいえば、経験・体験(experience)しなければ、その財の特徴や内容が分からないという財です。

 経験とは、実に、ユニークかつ貴重な行為です。なぜなら、経験は、消費者の生身の参加や接触にかかわるからです。サービスの大半と関係しています。サービス財は、供給する方も人であることが多く、大量生産になじまないので、供給コストは原則、高くつきます。では、なぜ、高い値段の経験財を人々は購入しようとするのでしょうか。

 経験によって、五感からの様々な刺激が得られます。それによって、モノやコトの本質が理解できるからです。それから、大きな興奮や満足が得られるからです。また、他者と触れ合うので、他者から様々な刺激や示唆も得られるのです。これらを通じて、自己実現も可能となります。

 この経験を考える経済理論に、「経験経済」(Experience Economy)があります。筆者は、この経験経済も、ひとつの研究領域・手法として長年研究しているので、別のタイトルで今後論じていきます。

 この経験は、情報の不確実性や非対称性からみると、ほとんど、その解消は難しいといえます。経験すればその内容は分かるといいますが、それは、それ以前の経験に依存する面が大きいのです。しかも、同じような経験を続けますと、その経験に対して飽きや退屈感が生まれます。一言でいえば、サービスが陳腐化するということです。そうなると、価値は低下しますので、そのサービスの購入を停止します。しかし、逆に、知れば知るほど、経験すればするほど、その知識や技能や意味がよくわかるようになり、もっと経験したいという欲求が高まることもあります。ある種の耽溺や依存現象ともいえます。もっと追求したいと考えるのです。そのどちらに転ぶかは、人によってそれぞれ異なります。

 経験財の価値の把握の難しさの一面がここにあります。

 豊かな成熟消費社会になればなるほど、個々人でいえば所得が増加すればするほど、消費に占める経験財の割合は、高くなります。

 この経験財は、現代消費の花形でもありますが、提供する経験財の内容(経験プログラム・サービス)や経験ステージの設計は大変に難しいものです。

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