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第16回 スクリーニングと自己選択

 私的情報をもつ側のいろいろなタイプを、何らかの基準によって区別するために、情報のない側が採る行動を「スクリーニング(screening)」といいます。

 たとえば、新卒採用の場合、企業側は、新卒応募者の情報はもっていません。そこで、エントリーシートや履歴書を企業に送らせ、その送られた情報に基づいて、企業側は、採用かどうかの可否を決定します。もちろん、書かれたものだけでは本人の意欲や能力は分かりませんので、テストをしたり、面接をしたりします。このような行為を、一般的には、スクリーニングということが多いのです。

 しかし、情報経済論的には、上記のように、事後に行う行動ではなく、情報提供前に、情報を持っている人に課される仕組みのことを言います。

 たとえば、当社は、個性的で創造的な能力を持つ人を最優先的に採用するというメッセージを応募者に出します。すると、個性的でない人や創造的でないと自分で判断した人は応募してこないでしょう。逆に、有名大学や有名企業に在職していなくても、個性的であったり、創造的な人は応募してくるでしょう。まったく採用する気のない人がきたり、条件に合わない人が応募してもらうことは、双方にとって大きなコストとなります。いまは、それがうまくいっていないので、大量の応募者がきている状態となっています。そうなると、当社にとって本当に必要な方が漏れ落ちる可能性が高くなります。または、一般的なシグナルで評価することも増えるのです。結局、相変わらずの候補者が選択され、企業は変革できないのです。日本企業、とくに大企業は、セレクションの仕組みを変えられないのか、不思議でなりません。経営状況がうまくいっており、大成長中ならまだしも、ほとんどの大企業が、停滞又は衰微している状況なのに、人から変えずにどうしようと考えているのか、理解に苦しみます。

 これと類似したものに、「自己選択(self-selection)」という概念があります。

 たとえば、応募者に、いくつかの職種や仕事を提示します。たとえば、総合職で昇進は早いが、日本中や世界中に転勤の可能性ありとし、他には、まったく転勤はなく、一定の地域で働き、ただし、昇進は低いなどです。転勤を承知で採用される前者を選んだ方は、納得づくなので、転勤に不満はないでしょう。対して、後者は、昇進は低くても、自分の好きな地域で仕事ができるので、これもまた納得するでしょう。

 日本は概して、すべてを平等に扱おうとしがちですが、労働者は自身の生活スタイルもそれぞれであることも考えると、多様な採用メニューを用意して、労働者自身に選択させるほうが合理的であるといえます。

 ようは、一人一人の労働者から、最大の努力水準を引き出すことが企業にとって大事なのですから、各々の労働者が自身で選べる労働条件が望ましいのです。

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