第43回 不完全競争市場の分類
市場は、きわめて大きくいうと、完全競争市場と不完全競争市場に分けられます。
これまでは、前者の市場の構造や働きをみてきましたが、今回からは、「不完全競争市場(non – competitive market)」についてみていきます。
この市場の分類として、ほとんどのミクロ経済学のテキストでは、供給者(企業)の数で分類していますので、ここでもそれを踏襲します。この場合は、厳密には、「供給者独占」といいます。需要者の数での分類も可能ですが、その記述はそう多くありません。ただし、現代経済社会において、新しい問題も起きていますので、機会があれば今後論じていきたいと思います。
この不完全競争市場の分類を示したものが下図表です。
この分類は、図表の著書を参考にしていますが、時代状況や産業ごとにほんとうはこのように単純化できないことをご承知おきください(分類の意義としては、概要を知ることに役立つのですが、差異が無視される欠点ももっています)。
まず、供給者が、1社の場合が、「独占(monopoly)」市場です。その場合、「製品差別化(product differentiation )」はありません。1社で、すべての需要者の需要を賄うからです。「価格支配力(price controlling power )」の程度は、大きいといえます。それゆえに、独占市場の弊害も大きいのです。
つぎに、供給者が2社の場合は、「複占(duopoly)」市場と呼ばれます。製品の差別化も2社で競争しているのですからほとんどありません。しかし、価格の支配力はかなり大きいといえます。
さらに、供給者が数社の場合は、「寡占(oligopoly)」市場と呼ばれています。製品差別化は、すこしはあるといえます。ただし、数社が市場シェアの大半を握っており、小さい企業が多数ある場合もこの市場で考えることが多いのです。その場合、製品差別化はある程度あるといってもいいかもしれません。結局は、個別市場の状況によるということでしょう。価格支配力は、上位数社にはかなりあるといえます。
最後に、「独占的競争(monopolistic competition)」市場があります。これは、供給者が多数おり、かつ、それぞれにかなりの製品差別化がある場合です。独占的な要因と競争的状況が混交しているような場合です。この場合、価格支配力はほとんどないといえるでしょう。
今後は、まず、独占の理論を考え、その後、複占の理論、寡占の理論、最後に、独占的競争の理論を考察します。