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第47回 費用逓減産業における価格形成

 独占の理論の最後として、「費用逓減産業(decreasing cost industry )」における価格付けの原理を説明します。

 これは、独占の一種であるとともに、公共財にもかかわっていることが多いので、「市場の失敗」のところで議論されることもあります。

 独占はすでにお話ししたように、独占利潤が生まれ、総余剰が小さくなるために、望ましい市場形態ではありません。

 しかし、費用逓減産業のように、生産規模が大きくなればなるほど、一個あたりの費用が低下するのであれば、1事業体に生産を任せたほうが効率的であることもあります。

 この費用構造を、図表を使って解説します。

図表 費用逓減産業の価格形成

「規模の経済(Economies of Scale)」があるような事業は、本来、需要も大きいでしょう。よって、需要曲線(D)も、右にゆるやかに傾いています。それにつれて、限界収入曲線(MR)も右にゆるやかに傾きます。さらに、平均費用曲線(AC)は、図表のずっと右の方にあり、図表ではまだその底が表れていません。限界費用曲線(MC)ももっと下がることを示しています。

 このような状況下で、いかに価格を形成する方が望ましいでしょうか。

 まず考えられるのが、利潤最大化の条件を満たしているQ1量で生産する場合です。この場合は、1事業体にとっては、利潤が最大となっていますが、価格はP1と大変に高いものとなっています。市民にとって必需財であるものがほとんどなので、この価格は家計を圧迫し、様々な企業の生産コストを押し上げることになります。

 つぎに、Q2量で生産することが考えられます。この場合、「平均費用価格形成原理(average cost pricing principle)」と呼ばれます。需要曲線と平均費用曲線が交わっている(B点)ので、この場合の価格は、利潤がゼロの状態となっています。この事業体が持続可能な状態であるといいかえることもできるので、望ましい生産量での価格ともいえます。

 しかし、Q3量まで生産することも可能です。この場合は、もちろん、これまでの価格よりも安いので購入者にとってはもっとも望ましい価格です。しかも、D曲線とMC曲線が交わってできていますので、C点はパレート最適点でもあります。ちなみにこのような価格付けを「限界費用価格形成原理(marginal cost pricing principle)」と呼びます。ただし、図表でいえば、赤の破線の四角形分、赤字となっています。赤字部分は、政府や自治体が補助金を出して補填することになります。あまり健全経営とはいいにくく、場合によっては、事業の廃止もありうるので、ここまでは価格を下げない方がいいという判断もあります。また、価格が安すぎると、資源の浪費も起こりうるという問題もあります。

 結局は、諸般の経済状況を勘案しながら、平均費用価格形成原理あたりに落ち着くようにするといえるでしょう。

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