第50回 寡占の理論 その2 参入阻止価格
前回から、寡占の理論を議論していますが、その2回目として、「参入阻止価格(entry-preventing price)」を考えてみます。
寡占といっても、数社がほぼ同等のシェアをもって競争している場合もあるでしょうが、1社がきわめて大きく、ほぼ独占状態といってもいい場合もあるでしょう。
ここでは、1社が大きなシェアをもっている場合を考えてみます。この場合は、独占市場のフレームを使ってもよいでしょう。そこで、今回は独占市場のフレームを援用して、参入阻止の価格付けを考えてみます。
独占者は、利潤最大化の条件を満たすように行動ことはすでにみました。図表でいえば、「MR=MC」の交点Cから、独占価格p*と独占量Q*を得ました。この場合は、大きな独占利潤を獲得できました。
しかし、いつまでも独占状態が続くとは限りません。また寡占であっても、そこに超過利潤が存在する以上、常に、他社がこの市場に参入することが考えられます。
そこで、独占者または有力な寡占者が、あえて低い価格を設定することが考えられます。図表でいえば、P’のような価格です。この場合の利潤額は、赤の破線の四角となります。そうすると、ライバル社はこの市場に参入するうまみを失いますので、参入しないこととなります。この極端な場合は、P’’まで下げれば、自身すら超過利潤がゼロとなります。このようにすれば、参入者が現れないので、長期的に市場を獲得し続けられます。