第51回 寡占の理論その3 屈折需要曲線
今回は、寡占の理論のうち、「屈折需要曲線(kinked demand curve)」を考えます。
この理論では、なぜ、寡占市場下では価格が硬直化するのかを示します。
この理論フレームでは、需要曲線が、図表のように屈折していることが特徴的です。図表では、AEBと表されています。
まず、需要曲線がなぜ屈曲しているのかを考えます。ここは寡占市場を考えていますので、少数社で競争している状況です。その場合、ある1社が価格を引き下げた場合とある1社が価格を引き上げた場合を考えます。
ある企業が価格を引き下げると他の企業はどのような対応をとるでしょうか。同じ質の財ですから、価格が安くなれば、下げた企業の財は売れ、他社はその分売れなくなります。そこで、他社もこぞって価格を下げるという対抗策をとるでしょう。すると、最初に下げた企業の需要は思ったほど伸びません。図表では、EB曲線のように傾きが急になります。
一方、ある会社が価格を上げた場合を考えます。価格を上げた場合、それに追随する場合もあるでしょうが、他社は価格を据え置くと考えます。すると、価格を上げた企業の商品は売れなくなります。この場合は、需要曲線は、AE線です。需要曲線の傾きは、緩やかなものになります。逆にいえば、売り上げを大きく下げることになります。
以上の理由で、需要曲線は、E点で屈曲するとみるのです。
すると、AE線に対応するMR曲線は、図表ではAC線となり、EB線に対応するMR曲線は、DF線となります。すなわち、限界収入曲線が、分断されることになります。この間にMC曲線があるときには、MC1がMC2になっても、生産量と価格は変化しないことになります。費用の変化がある程度あっても、価格が硬直することを示しているのです。