総合システム論 第一回 思考を考える理由
思考とはなにかを、なぜ考える必要があるのでしょうか。
あまりにもありふれた言葉で、語りつくされているともいえる言葉・概念をこのコラムで最初で「考える」ことにした理由は、以下のような筆者の必要性があったからです。
私が属している大学院は、社会人大学院なので、大学院生は、多様な課題を持ち、様々な学問からアプローチしていきます。基礎理論的な研究の方もいれば、企業活動や企業実践にちかいものもあります。そのときに、それぞれの課題にどのような研究方法が最適かを学生とともに発見・同定・適用する必要があります。しかし、その多様な思惟にも共通して有用な知見もありそうです。それが直接的には利活用されなくても、基盤として、理解しておくことが大切なこともあります。そこで、今一度、このコラムを通して、考えてみたいと思ったのです。
さらには、行動経済学も本ゼミではひとつのアプローチ手法として、フレームワークとして採用していますが、この学問は、まさに、人間の認知や思考のゆがみ、バイアスを考察します。行動経済学は、今流行りの学問分野ですが、その淵源は、心理学や認知科学や哲学にあります。そこで、その基礎概念を再検討するために、思考とはなにかを考えようとしています。
また、2020年4月から、小学校のプログラミング教育が必修化されますが、文部科学省の指導要領では、単に、プログラム技術や知識を教えるのではなく、子供たちの思考力や論理力を養成することが狙いであるといいます。広い考え方は理解できますが、子供の思考力・論理力を高めるための教育プログラムは出来上がっているのでしょうか。安直な知識伝達やロボット操作ゲームに終わりそうな危惧があります。そもそも教師がプログラム教育を正しく学んでいない方も多く、指導者不足や技量不足が懸念されます。
最後に、日本の経済社会は、四半世紀にわたる停滞が続いているといってもいいでしょう。そのブレイクスルーのためには、まさに、大人の創造的思考が高まり、より多くの付加価値を生み出すことが求められています。この低迷を脱出ためには、思考様式自体を根本的に再構築する必要があるように思われます。
ということのために、思考を考えてみようと思ったのです。いま、「X思考」が一部では流行っています。Xのなかにいろいろな言葉や概念をいれると、新しい思考が生まれます。
なお、筆者は40年以上前から、「一般システム理論(General System Theory))」派ですが、ここでは、ジェネラルを「総合」と読み替えています。