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マクロ経済学第8回 依存効果

 この説は、制度派経済学者の泰斗、J・K・ガルブレイス(J. K. Galbraith; 1908-2006)が唱えたものです。彼の名著『豊かな社会(The Affluent Society)』(1958)で述べられました。

 私たち消費者は、毎日、様々なモノやサービスを購入して生活しています。そのほとんどは、やはり、生活に必要な財(必需財)ですが、その他にも奢侈財(高級財)なども購入しています。どちらにしても、一定の所得制約の中で、個人はそれからの効用が最大化するように購入するという見方が、古典派経済学における合理人仮説でした。

 ところが、前回みたように、空間的相対所得仮説では、個人の周囲の人々の消費動向や消費顕示から、個人の消費は影響を受けているとみました。たしかに、日本人は、周りの人の目が気になり、周りに同調しようという傾向が強いように思われます。ただし、これも消費者間の問題です。

 それに対して、ガルブレイスの問題提起は、財の供給者側の行動が消費に影響を与えるというものです。マスコミによる宣伝や広告によって、過剰に人々の消費が煽られ、促進されるとみるのです。いわば、供給者(企業側)が、消費者の需要(欲求)を生み出しているともいえます。確かに、マスコミが日々大量に流す、絶え間のない広告・宣伝によって、過剰な消費が生まれることもあるでしょう。このような効果を、「依存効果(dependance effect)」と彼は呼びました。

 しかし、需要曲線(demand curve)は、商品情報の提供によって高まることは知られており、それ自体は、消費者主権にもかなう面があります。商品に対する十分な情報は、商品の正しい消費選択を可能にするからです。

 いまでは、マスコミにかわって、SNSやソーシャルメディアなどによる情報提供行動によるクチコミが重要視されつつあります。これも、消費者自身がその評価や感想を発信するという面と企業が自社商品の宣伝をするという面が一体となっています。実際、ブロガーやYouTuberは、企業の宣伝広告の一部を担っている場合もあります。

 いまは、需給ギャップ論でいえば、需要が供給よりも小さいことが問題となっています。適切な広告・宣伝または各種の情報提供行動をどう考えればいいかを、今一度、真摯に熟考する時期に来ていると考えられます。

 それへの一石として、この依存効果は、現代的意義を失っていないといえます。

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