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マクロ経済学第73回 資料編その12

 今回も、総務省『情報通信白書令和2年度版』の資料から、情報化投資に関してみていきます。

 投資は、2つの効果をもっています。それを「投資の2重効果(Dual effect of investment)」と呼ばれています。

 まず、投資が行われるとそれに関する財やサービスが購入されます。マクロ経済学における需要関数のなかには、企業投資(I)がはいっていました。景気が振るわない場合に、企業の設備投資の鈍化がみられるなどといい、需要面の減退の意味でつかわれています。よって、投資は、消費(C)とならんで、総需要の柱の一つです。

 一方、投資は、企業の生産設備の増強・強化になります。単位時間あたりにより多くの量を生産したり、より高い品質のモノが生産可能となります。

 そこで、今回は、情報化投資の現状と課題をみることにします。

  図表1 我が国の情報投資の推移

[総務省『情報通信白書令和2年度版』より引用]

 図表1は、我が国の情報投資の推移を示しています。この変化を全体的にいうと、1980年から91年までは、いわゆる収穫逓増のような成長曲線をみせています。それから、1994年に大きく落ち込んだ後、また、直線的な成長を示し、2008年のリーマンショック後、平均では成長がなくなっています。これが、前回の情報通信産業の経済成長への寄与度が下がったことや、他の産業の寄与度が低いことにもつながっているといえるでしょう。

 情報化投資の内訳をみると、ソフトウエアの割合がかなり大きいことが分かります。ゆっくりとその割合を高めています。

 つぎに、民間企業設備投資に対する情報化投資の比率をみると、2010年ではその比率が上昇していますが、それ以後、その比率が低下しています。この比率の最適値はいくらなのかは、議論が分かれるところです。

 これに関しては、本コラム・Eビジネスの第26回の「生産性パラドクス」および第27回の「生産性パラドクスの2」をお読みください。そこでは、日米のICT資本の経済成長率への寄与度の変化を示してます。

 図表2は、ICT財・サービスの輸出と輸入の推移を示しています。

 図表2 ICT財・サービスの輸出入額の推移

[総務省『情報通信白書令和2年度版』より引用]

 まず、ICT財(実質値)は、2011年までは、輸出が輸入を上回っていたのですが、それ以後は、輸入超過となっています。また、ICTサービス部門は、一貫して輸入超過です。

 これからすると、日本は世界のなかでは、ICT関連財に関しては輸出国ではなく輸入国になっているのです。

 情報通信関連業における大企業経営の厳しさがよく報道されますが、この面からもそれを裏付ける形となっています。

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