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AI経済学 第5回 アプローチ3 

 AIを直接的に扱っている学問分野は、コンピュータ科学や情報工学です。

 「コンピュータ科学(Computer Science)」とは、「コンピュータの理論、設計、応用について研究する学問」です(『ブリタニカ国際大百科事典』より引用)。その項目として、10上げていますが、そのひとつに人工知能がはいってます。また、東京大学大学院・情報理工学系研究科のコンピュータ科学の説明では「計算の基礎理論、計算システム/プログラミング、ビジュアル情報、コンピュータアーキテクチャ、生物情報を中心とした計算システム分野の教育・研究」を行うことを目的とすると書かれています。

 一方、「情報工学(Information Engineering)」とは情報科学とほぼ同義に扱われますが、「情報科学の研究をもとにその情報の自動処理技術や通信技術などの研究を目指す」(『ASCII.jp』より引用)とされています。

 文字通りコンピュータ科学は、もともとはハードウエアの研究を中核に据えており、情報工学は、ソフトウエア(および通信技術)に対応していると考えればわかりやすいといえますが、認知科学、コンピュータ科学、情報工学がその研究内容と水準が高まっている今、それらは融合・複合化しているといえます。

 経済学によせていうと、ミクロ経済学においては、需要関数と供給関数によって、均衡点が一意に決定し、均衡価格や均衡量がきまると考えるのが古典的経済学の市場論の基本です。ここで、AIは、その需給両面に大きな影響を与えると考えられます。

 需要面に関していうと、需要とは、本コラムのミクロ経済学をお読みいただければと思いますが(本コラムのミクロ経済学全80回)、人々の欲求のことです。財やサービスの中に、AIが実装されていたり、AIによって研究・開発が支援されると、財の機能や性能、品質が向上するといえます。また、マーケティング的には、より自身が欲しいモノが見つけやすくなり、購入しやすくなるでしょう。このような需要曲線の右上方へのシフトについては、今後、詳述したいと思います。

 供給面に関していうと、これまでのマクロ経済学の中心は、新古典派経済成長論であり、新しい経済成長理論としては、AK理論でしたので、生産のための資本装備と捉えることができるでしょう(本マクロ経済学全90回参照)。しかも、本コラム・マクロ経済学第80回(成長会計)で述べたように、成長への3つの寄与要因のすべてに影響を与えると考えられます。

 今一度述べると、既存の資本(物的資本)を再強化できるかもしれません。古いビンテージの生産設備を刷新できるかもしれません(逆に、廃棄に追いやることもありますが)。自律化できなかった生産資本に自動性と自律性をもたせていければ、生産性は劇的に上昇する可能性があります。また、人的資本においても、「HA(Human Augmentation)」によって、効率的意味での人の生産能力を大いに拡大するかもしれません。最後に、TFPも、無体の知識や技術やノウハウが社会全体に蓄積されれば(外部性も含めて)、インフラ資本の生産性も上がることが考えられます。

 AIの適切な導入によって、総合的全体的に、労働生産性が上昇すれば、資本側も労働者側もメリットを享受することになります。

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