総合システム論 第8回 パスカル的思考
本コラムの第六回では、デカルト的思考を考えました。
同時代のライバルは、パスカル(Blaise Pascal, 1623-1662)です。
デカルトは、理性に偏重し、理性以外の精神を軽んじていると、主著『パンセ』の中で述べています。
これを一言でいうと、デカルトの精神は「幾何学的思考」であり、分析にかたよっているとみました。それに対して、パスカルのそれは、「繊細的思考」で、直感的な全体的判断を重視しました。
これを現代の経済学に置き換えて考えてみますと、デカルト的思考は、ミクロ経済学に相当します。情報が十分にあるなか、合理人としてそれぞれの主体は行動するからです。これに対して、パスカル的思考は、行動経済学に見立てることができます。行動経済学では、理性以外の感情や直感的判断の役割を重んじるからです。様々な経済における意思決定や行動は、偏見やバイアスを含みながらも、それを活用しながら、なんとかやっていこうとしているからです。
もちろん、なるべく情報を十分に得て、合理的客観的に物事を判断することは望ましいことですが、必ずしもそれがすべてではありません。むしろ、直感による意思決定が重要なこともあります。
次回は、行動経済学が言う、システムⅠとシステムⅡという意思決定方略を考えてみたいと思います。