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総合システム論 第20回 メディアとコンテンツ 

 いまは、2項対立的思考をつかって、社会科学のいくつかの問題を簡潔に論じております。

 この2項対立は、ものごとを2つの対立軸に分けるということと、いまひとつは、その2つがセットとなって意味を成しているということです。

 今回は、メディアとコンテンツを考えていきます。

 「小人は経験から学び、大人は歴史から学ぶ」という名句がありますが、半世紀以上生きてきた筆者は、そこそこに年をとってきたので、経験と歴史は一緒に考えることもあるのかなと思い、自身の子供の頃も話をします(年寄りが昔の話をするのは、一般には煙たがられるのですが、このような意味もあるのかもしれません)。

 筆者は、本州の最西端の県に生まれ育ちました。当時のTVチャンネルは、NHK2チャンネルと民放2チャンネルしかなく、かつ、受像機は、真空管の白黒TVでした。ときどき、TVの見過ぎかどうか知りませんが、真空管が過熱のために、破裂していました。それでも、田舎の娯楽はTVしかなかったので、老若男女、皆が食い入るように番組を観ていました。メディアの王様は、明らかにTVでした。ところが、現在は、地上波デジタル、BS、CS、ケーブルなどで、100チャンネルおよびオンディマンドでも観ることができるので、TV番組の多さはけた外れに増えました。ところが、国民のTV視聴時間は減っているのです。少なくとも、地上波は、減っていると考えられます。

 筆者のようなおっさんですら、今の地上番組に、面白さを感じません(個人の感想)。現に、ほとんどTVを観なくなりました。見るとしたら、ケーブルの世界的に有名なチャンネルと、ニュース専門番組です。

 とくに、若者のTV離れは、進んでいるといわれてます。まわりの若者に聞いても、そうだといっています。

 先日、ある知り合いの若い男性と話をしていて、彼の子供は4歳の女子だそうです。その子供は、何を観ているのかと聞くと、TVはまったく観ないそうです。その代わりに、YouTubeを観て、ゲラゲラ笑っているそうです。その内容は、子供が好きな人形を扱っている内容だそうです。商品である人形にまつわる物語のようなものでしょうか。世界一の収入を得るYouTuberも、子供で、おもちゃの紹介番組を作っているそうなので、そのようなものでしょうか(もちろん、大人が差配していることは当然ですが)。

 物心ついた幼児から、若者までがTVを観ずに、ネットコンテンツを観ているとすれば、TV局の危機は十分に分かります。2019年に、ついに、TV広告収入は、ネット広告収入に負けました。若年層のほとんどの若者が、ネットしか観ないとすれば、TV局に明るい未来はないように思えます。

 ここで、メディアとコンテンツの関係をいえば、ネットメディア環境は、コンテンツの内容も変容させます。さきの幼児の例でいえば、そのような人形を買う幼児または児童、それも女子用にコンテンツを制作することになります。どんどんと趣味や関心や目的に応じて、ターゲティングされたコンテンツとなっていくでしょう。何千、何百万人の視聴は得られなくても、商品を購買してくれる顧客に強く訴求できるのならば、費用対効果でも、こちらのコンテンツ制作・配信のほうが、マーケティング効果が大きいといえます。ネット動画のすごい点は、動画をアップしておけば、徐々に再生回数は増えていきます。ある人のチャネルを観ていると、他の動画も見られるからです。しかも、同じ人が同じ動画を何度も繰り返し観ている可能性も多いのです。

 しかし、多種多様なメディア・コミュニケーション手段が爆発的に増加する時代でありながら、コンテンツ作りの科学的法則や優れたコンテンツのための方法論は確立しているとは言えない状況です。まさに、「ブリコラージュ」的な創意と工夫で、コンテンツを作っている状態です。

 もちろん、大規模なドラマや映画も、少数ですが、生き残るでしょうが、今後は、ますますブリコラージュ的コンテンツが、トフラーがいうような「プロシューマ―」(プロデューサーとコンシューマーを兼ねた存在)によって制作されるように思われます。

 どちらにしても、新しいメディア環境にあったコンテンツ作りの成功法則をいち早く確立した人々が、2020年以降のメディアの勝者になりそうです。

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