AI経済学 第12回 カスタマーエクイティ
この何回か、需要関数を高めるための価値論を書いてきました。
ここでは、R.T.ラストの『カスタマーエクイティ』(ダイヤモンド社、2001)の3つのドライバーを考えてみたいと思います。
「カスタマーエクイティ(Customer Equity)」とは、顧客価値(資産)のことで、どのようにすれば、この顧客価値、すなわち、顧客需要が高まるのかを考えるものであり、広い意味のブランド論からみたものです。
これは、「バリューエクイティ(Value Equity: VE)」と「ブランドエクイティ(Brand Equity: BE)」と「リテンションエクイティ(Retention Equity: RE)」で構成されるといいます。
そのVEは、さらに、「品質」と「価格」と「利便性」のサブドライバーから構成されているとみます。これは、コトラーの製品の中核や実体の一部をなすといえます。
これに対して、BEは、VEと関係しながら製品(商品)やサービスの価値を高めるものをいいます。このサブドライバーは、「顧客のブランド認知」と「ブランドに対する顧客の態度」と「ブランド倫理に対する顧客の認識」から構成されます。具体的には、コミュニケーション・ミックス、メディア、特別なイベント、プライバシー方針や環境への配慮などがあげられます。
REは、製品やサービスではなく、企業と顧客との関係性やつながりを指します。具体的には、ロイヤリティ・プログラムやアフィニティ・プログラムやコミュティ形成などです。いまでは、SNSなどを通じた顧客との一体感や共感を生み出すような仕掛けといいかえることもできます。
この考え方も、この何回かの記述からすると、お察しがつくと思いますが、VEとBEとREがつみ重なれば、需要関数は上方に移行することになります。
また、価値を高める要因であるメインドライバーやサブドライバーが決定できれば、それは、変数化でき、さらには、方程式化ができるということです。
それをPythonで、シミュレーションすれば、予測が可能となります。何を改善し、何を変更する必要があるのかが分かります。
ただし、今回みてきたいくつかの理論だけでも、視点や理論構成は変わっていることが分かります。どのような財を扱うのか、どのような人に適合するのかは、まさに、様々な移行錯誤が必要です。
その意味でも、理論枠組みとそのシミュレーションおよびプログラム化は、一体で考える必要があると考えられます。
さらには、そのような複雑な価値構成の分析にはAIを使うことが今後は必須かと考えます。