note

日々の研究を記します。

  1. HOME
  2. ブログ
  3. Eビジネス
  4. 第5回 六次の隔たりの理論

第5回 六次の隔たりの理論

 1990年代の末あたりに、いわゆる「インターネットブーム」が到来しました。インターネット関連であれば、どんなに適当な企画でも投資されていたといわれていました。それも2000年に終わりを迎えました。その後、ICTまたはインターネットビジネスが冬の時代を迎えました。ただし、このようなものしか成長力のあるビジネスもなく、インターネット関連ビジネスは、日本全体のGDP成長率が2%もない中、数%~十数%の成長率を誇っていました。とくに、BtoC型の電子商取引は、高い成長率で伸びてきました。

 インターネットビジネスは、まさにいま発展期を迎えているといってもいいでしょう。これを加速させるものが、ビッグデータ、IoT、AIなどです。そんな中、インターネット力の理論化も進んでいきました。

 すでに半世紀もたっていますが、「社会的ネットワーク理論」と呼ばれているものです。社会経済のなかでのインターネットの意義や可能性を考えるものです。

 それがいままた脚光を浴びるようになったは、インターネットが誰でも使えるようになって、様々なICTビジネスやプラットフォーマーやシェリングエコノミーなどが生まれつつあるからです。

 それに関する最も主要な理論が2つあります。

 その第一は、S・ミルグラム(1967)の「6次の隔たり(Six Degrees of Separation)」の理論です。これは、見知らぬ人が見知らぬ人に手紙を出して、どのくらい人の手を経て手紙が届くかという社会実験から得られた理論です。届かなかった手紙も相当数あったのですが、届いた手紙は、5.5人を経て届いたので、6次の隔たりの理論といいます。

 米国は国土も広く、人口も3億人近く(今現在)、物理的距離は世界屈指の長さといってもいいでしょう。それにもかかわらず、数人を隔てるだけで届くというのは、人間のネットワーク、いいかえると社会的ネットワークは、実は、「スモールワールド(小さな世界)」ではないかという知見を得たのです。

 この知見からは、いくつかの重要な意味が見出されました。その第一は、届かなかった手紙に関してです。届いた先の人が、親しい知人がいない、またはいないような状況にあることは考えられることです。ネットワークの言葉でいえば、リンクがほとんどないような人(ノード)も存在するということです。第二は、きわめて多くの手紙が特定の人に届いたということです。これは逆に、たくさんのリンクをもっているハブのような人がいることを示しています。社会経済での有力者や社交家は、数は多くないでしょうがいます。これを一言でいうと、社会ネットワークは、差別的ないしは階層的であるという事実でした。

 しかし、ちょっと考えればわかりますが、社会的ネットワークは、人間世界の一側面なので、現実の社会を映したものといえます。現実社会は、階級的であり、決して平等かつ民主主義的ではないのです。

 この社会実験は、その後、いろいろと行われており、たとえば、経営者たちのネットワークはどうなっているのかというのもあります。これも結論は見えていますが、経営者層の数の少なさと経営団体や組織がいくつもあることから、一般社会よりもスモールワールドなのです。経営者がますます豊かになる理由もこのなかにあります。有利な投資話が経営者同士のなかで回っているのです。

 どちらにしても、この社会は、スモールワールドなので、良くも悪くもすぐに情報が拡散してしまうのです。これをビジネスを発展させるために使うならば、インターネットをフルに活用して、多くの顧客を素早く獲得することができるといえます。なんたって、この世の中は、スモールワールドですから。

インターネットビジネスが、短期間に、大成長を遂げる理由のひとつといえます。 

関連記事