第80回 生産者保護の補助金効果
国際貿易論の最後として、自由貿易を維持したまま、自国の生産者を守るために、生産者に「補助金(Government subsidy)」を交付することによる効果を考えます。
ここでも、自由貿易の議論のうえに、生産者保護のための補助金が、関税と単位当たり同額出る場合を考えます。
補助金が関税tと同じであれば、供給曲線はSからS’となります。
これを前提として、図表をつかって議論をしていきます。
ここでは、自由貿易を実施しているので、国際価格(Pw)で輸入をすることになります。
これによって、国内消費量はQ2で、国内生産量はQ4となります。輸入量は、(Q2-Q4)です。消費者余剰は、AEwPwとなります。これは、自由貿易の消費者余剰と同じです。これに対して、生産者余剰は、PwHJとなります。
ここで、平行四辺形CFHJは、補助金額です。ここで、補助金は、政府の支出なので、マイナスの余剰と考えられます。
よって、総余剰は、(消費者余剰AEwPw)+(生産者余剰PwHJ)- (補助金額CFHJ)なので、生産者余剰は、四角形CBHJほど増加しますが、死荷重として、三角形FHBほど発生します。
この結果をまとめると、国内生産者を保護する場合は、関税をかけるよりは補助金を支出するほうが総余剰は大きくなるといえます。
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<「ミクロ経済学」のコラムの終わりについて>
ミクロ経済学のコラムは、今回で80回となり、情報経済論と合わせると100回程度となりました。
このコラムは、筆者の受講生の学習の補助資料として書いてきました。
その前期の講義も終わり、ミクロ経済学の大半の基礎的な内容は書終わったこともあり、一旦、このコラムは終了いたします(ただし20程度の補論は必要ですが)。
読んでいただいた方に感謝申し上げます。
筆者の講義ノートとしての役割からして、2020年春からは、「応用ミクロ経済学」として執筆を再開したいと考えています。
2019年10月からは、「e-マーケティング」という講義が始まりますので、この9月から、それに関する内容のコラムの執筆を開始します。ただし、Eビジネスというタイトルには、すでに20本程度ありますので、その中で書いていきます。
今後も、コツコツ書いていきますので、ご愛顧ください。