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第3回 情報爆発と不確実性

 第2回目のコラムで、VUCAというキーワードで、現代経済社会における不確実性をちょっと眺めてみました。

 今回は、それを情報量で考えてみたいと思います。

 皆さんは、近年、情報が増えたなと感じられているでしょうか。人間の感覚や評価はきわめて曖昧なものなので、人によって感じ方が異なるかもしれません。

 たとえば、このコラムを読まれている方が、学生であれば、生まれながらのデジタルネイティブといえますので、いやあまり変わらないと思われるかもしれません。ご年配の方は、かつては、PCもなく、インターネットもなく、スマホもなかったので、それに比べると飛躍的に、社会の中での情報量は増大しているように感じられるかもしれません。

 そこで、定量的に状況を知るために、この最近の『情報通信白書』(総務省)の中のデータを見てください。その中に、情報量の推移を示したものがあります。

 情報流通量は、確かに、指数関数的に増大しています。これからすれば、やはり、社会の中での情報量は増大しているといってもいいかもしれません。

 しかも、その増加のほとんどは、インターネットの中での流通量なので、消費者が接する情報が増えたといえるので、情報の不確実性や非対称性は解消されつつあるという人もいます。

 しかし、消費情報量は、ほとんど増加していません。これは何を意味しているのでしょうか。

 まず、情報消費量が増えないのは、情報消費が、時間消費との関連が大きいからです。人の一日の時間は24時間、1年は365日と決まっており、そのなかで、睡眠と仕事を除いた可処分時間は限られているからです。毎日、インターネットのなかの情報を見ているといっても知れています。もし、仕事以外で10時間以上消費している人は、ネット依存症(中毒)などかもしれません(ここではその良否は問いません)。日本人の総情報消費量(総消費時間)は徐々に増加しているにしても、情報流通量は劇的に伸びているのです。

 ただし、情報流通量の中身をみるとどうでしょうか。近時は、ネット動画が増加しています。動画は、テキストや画像と比べてもその情報量がきわめて大きいのです。SNS系の動画投稿が増えれば、当然に、流通量は増えます。また、ネット内はコピー情報が多く、同じコンテンツが何千回、何万回と視聴されれば、流通量は増えるでしょう。これらを考えると、オリジナルで、価値のある情報(これも誰にとっての価値かなどの検討は後述)はそんなに多くないといえるかもしれません。

 とはいえ、まとめると、流通している情報量は、飛躍的に増加しつつあるが、消費量は徐々にしか増加しないので、「未消費の情報量は増大している」(絶対的にも相対的にも)といえるでしょう。これを普通、「情報の氾濫」現象とか、「情報の爆発」現象といいます。

 このような現象下では、情報の不確実性は減少しているといえるでしょうか。やはり、むしろ増大しているといえるでしょう。

 前回話したニューエコノミー論が見間違えた理由のひとつです。

 ところが、GAFAの大きな存在理由のひとつがまさにこの情報の不確実性の解消なのです。

 いうまでもないことですが、GAFAとは、Google、apple、Facebook、Amazonの頭文字をとったもので、すべて米国のプラットフォーマーです。世界の株の時価総額のトップ5に含まれます。すべてを述べることもないので、Googleを代表として考えます。

 Googleは、世界最大の検索ビジネスで、一日のアクセス回数は、Facebookと双璧です。インターネット内の情報量が爆発的に増えれば、情報を見つけることがますます困難になります。これまでの言葉でいえば、情報の不確実性が増大します。そこで、当社の検索エンジンを使えば、数ワードを入れれば、かなりの確率で検索可能となります。発見したい消費者と発見されたい企業とのマッチングビジネスといえます。世界中の消費者と企業関係者が利用すれば、当社にはきわめて大きな利益がもたらされます。

 消費者にとっては、検索エンジンの活用によって、時間が節約されるので、少しは情報の不確実性や非対称性が解消されるようにもみえますが、検索エンジンはビジネスなので、インターネット広告関連費を払わない、払えない中小企業は選ばれる可能性が減っていきます。インターネットの商業利用も当たり前ですが、資本主義レジュームのなかにあるので、その論理が貫徹します。これをデジタル資本主義とか、データ資本主義ということもあります。

 さらには、個々人にとって、検索時間も限られているので、完全に十分な情報が得られるということは原理的にも、現実的にもないといえます。

 総括すると、膨大な情報流通量のなかで、きわめて独占的(寡占的)な情報検索企業の存在は、当否は別にして、情報の不確実性が解消されつつあるという見方は採用できないといえます。

 このような2020年前後の情報環境のなか、中小企業および消費者は、どのような行動をとるべきかを考えるのが、情報経済論の論点のひとつなのです。

 

 

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