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第75回 貿易の利益と交易条件

 今回は、貿易論の基礎概念として、貿易の利益と交易条件を考えます。

 ここでは新しい重要な概念が出てきますので、その説明を先にします。

 ここの議論の前提は、「小国モデル(small country model)」と呼ばれているものです。小国とは、「自国の経済規模が十分に小さいために、国際経済に影響を与えない経済国家」のことです。ほかの言葉で言い換えると、自国の財の価格が国際価格に影響を及ぼさないくらい小規模な経済をもつ国家のことです。

 この小国モデルでかつ生産活動をしているモデルを今回は扱っています。生産をおこなっていないモデル(自給自足モデル)はこのなかで解説可能なので、ここでは生産を行っているモデルでかつ2財モデルです。

 つぎに、「生産可能性曲線(PPF: Production Possibility Frontier)」とは、「経済主体がすべての資源を使って最大生産可能な財の集合を表した曲線」といえます。すなわち、国内の生産要素を使い切って最大いくら2財を生産できるかということです。図表では、PPという赤い曲線で示されています。また、生産可能性曲線が原点に凹の形状であるのは、財の限界生産物が収穫逓減の法則にのっているからです。まとめると、生産可能曲線の外側は生産不可能を示し、内側は生産可能ですが、資源を使い切っていない状態を意味しています。

 さらに、「交易条件(terms of trade)」とは、「海外に輸出される財の価格と海外から輸入される財の価格の比のこと」です。いいかえると、ある年の輸出単価指数を輸入単価指数で割った値をいいます。

 定式化すると、

Pxw / P y w ・・・・・・・①

 ここでのPは、国際的な価格における交易条件です。Pxwは、国際価格としての輸出財(X財)の価格であり、P y wは、国際価格としての輸入財(Y財)の価格のことです。先も話をしたように、ここのモデルは小国モデルなので、貿易の場合は、国際価格が基準となります。

図表 貿易の利益と交易条件

 図表でいうと、TT曲線の傾きが交易条件ということになります。

 では、貿易の利益の解説を、図表をつかっておこないます。

 図表のPPは生産可能性曲線で、この国の2財の最大の生産可能性の組み合わせを示しています。もし、貿易をしないならば、すなわち、この国が自給自足をしているとすれば、図表のような「自給自足点(self-sufficient point)」で、生産と消費がおこなわれます。なぜならば、生産可能性曲線と無差別曲線が接しているからです。この場合は、生産可能曲線の接線の傾きである「限界変形率(MRT: Marginal Rate of Transformation)」と無差別曲線の接線の傾きである「限界代替率」が同じ値となります。

 ここで、国際的な交易条件TTと生産可能性曲線が接している点が、「最適生産点E1」です。このときは、X財とY財は、(X1,Y1)という組み合わせで生産しています。

 しかし、TT曲線に接している無差別曲線U2が考えられます。U2は、国際的な交換条件を満たす無差別曲線であり、U1よりも上方にあるので、こちらの方が、大きな効用を得ていることになります。

 この場合、(X1 - X2)の量を輸出に回します。なぜなら、X2が国内の消費量だからです。これと同じようにY財を考えると、この国のY財の消費量は、Y2で、生産量はY1なので、(Y2 ― Y1)の量は、輸入することになります。

 このように、X財は輸出し、Y財は輸出することによって、この国の無差別曲線U1は、より上位の無差別曲線U2に移動するので、貿易の利益があったといえるのです。 

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