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総合システム論 第32回 知性仮説

 今回から、新しいフェーズとして、広い意味での「行動経済学」の内容を書いていきます。

 広い意味というのは、もともと行動経済学は、認知心理学や社会心理学が対象としていたものを、経済経営領域への応用が進んだために、独立分派したといえるので、それらの知見を広範に取り入れていこうということです。

 その場合に、人間の精神力は、「知情意」という三つの要因から構成されると考えると、そのすべてを使って、経済的意思決定や経営的意思決定を行っているので、知性のみではない部分の理解も、今後はより重要になっていくでしょう。

 その前に、知性もここで簡潔に論じておきます。

 「知性(intelligence)」とは「一般に知ったり、考えたり、判断する能力」(『ブリタニカ国際大百科事典』)であり、「比較、抽象、概念化、判断、推論などの機能によって、感覚的所与を認識にまで作り上げる精神的能力」(『デジタル大辞泉』)と考えられています。最広義では、「一切の知的な性能を統括した概念」(『心理学辞典』平凡社)であるといいます。

 この知性と感情と意志(意欲)が一体となって、私たちはあらゆる経済行動をとっているといえます。

 ところで、この知性は、どうして人間だけが高度に発達していったのかという議論があります。

 この場合、人間の知性の進化を知るためには、いまの人間と過去の人間を比較することがもっとも望ましいのでしょうが、すでに20万年前に誕生した人間(ホモサピエンス)はいないので、霊長類を観察することで理解しようとします。

 その世界的研究は京都大学がおこなっているといえるので、その『霊長類学のすすめ』(京都大学霊長類研究所編、丸善)から、知性の発展に関する仮説をみていきます。

 大きく分けると、「技術的知性仮説」と「社会的知性仮説」の2つがあります。

 前者は、ひとことでいうと、道具の利用によって、知性が発達したとみます。後者は、他者との関係性の高度化によって、知性が発達したとみます。

 この2つは、それぞれに重要な内容をもっているので、次回と次々回で詳述したいと考えます。

 行動経済学では、その主要な要因として、「ヒューリスティックス」と「時間選好性」と「他者性」を考えます。先の知性仮説との関係から考えると、技術的知性仮説は、ヒューリスティックスと時間選好性におもに関わっているように思われます。人間の動作と道具の操作によって、時空間的に対象物にどのような影響を与えられるかを理解するからです。それに対して、他者性は、自分以外の他者、たとえば、母親、父親、祖父母そして兄弟姉妹などの家族との関係性や、友人・知人や職場の上司や同僚や、同じ地域に住む人々や社会集団との関係性が自身の意思決定に大きな影響をあたえるからです。

 また、技術的知性では、おもに、狭義の知性がかかわり、社会的知性は、感情やそのなかでの意思(思い)も大いに関わっています。

 消費行動をとってみても、商品やサービスの性能や機能や量や価格のみで購買を決定しているとはいえないでしょう。ほかの言葉で言い換えると、合理的判断のみで購入していることのほうが稀であるともいえます。そのように、非合理性を含めたまさに人間らしい意思決定や判断・評価を考えるのが、行動経済学なのです。

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