第49回 寡占の理論 その1 マークアップ価格形成
寡占とは、複数社で形成する市場状態のことです。
この複数社も、価格への影響をもつと考えられます。
この寡占の理論もいろいろとありますが、今回は、「マークアップ価格形成(markup pricing)」を取り上げます。これは、別名、「フルコスト原理(full-cost principle)」とも呼ばれています。もともとは、1930年代の英国の主要企業の価格づけの調査にもとづいています。
この理論では、需要の大きさは価格には全く影響がないとしています。それゆえに、需要変化にかかわらず、もっぱらコスト面で価格が形成されるので、価格は硬直的になりがちであることを示しています。
この理論の式は、
P =(1+m)AC・・・・・・・・・①
です。
これを変形すると、
P=(1+m)(AFC +AVC)
P = (1+m)AFC + (1+m)AVC・・・・・・・②
となります。
平均費用(AC)を、(1+m)倍することによって、価格が高くなるのです。それを示しているのが①式です。これを変形して、②式によると、平均固定費用(AFC)を(1+m)倍し、平均可変費用(AVC)も同様にして、価格を形成しようということが分かります。
どちらにしても、この式は、平均費用か、マークアップ(m)によって、価格を形成するのですから、需要の大きさは関係がないことになります。
日本の企業のかなりは、固定費用や原材料費等に適当な上乗せをして、価格を導いていると考えられます。たとえば、IT企業などのシステム開発価格の見積もりは、SEなどの人件費や施設などのコストを中心に値段を決めていることも多いように思われます。