総合システム論 第5回 再定義の射程
前回は、再定義や新ワードの創造によって、新しい世界を生み出すことを述べました。
しかし、それはどこまで可能でしょうか。
言語は、みんなが共通に理解している、または社会が承認している言葉がまずあります。なので、むやみやたらと、造語を作るのは、社会的混乱や秩序の乱れ(言葉の乱れ)につながるという見解ももっともな言い分です。日本語は英語3文字熟語が日々生まれて、また、死語化しています。
ここでは、社会学的な問題というよりも、経済・経営領域に限った話を考えますので、かなり絞った議論が可能となります。
経済学的には、新商品や新事業が成功しなければ意味がありません。別のいいかをすれば、売上が増大するか、利潤が拡大するということです。もっといえば、一定の費用のもとでの利潤が最大化することを目指します(個人でいえば効用の最大化)。
この場合、普及学の応用がまず考えられます。これを延長したのが、筆者の「適切な不一致論」です(拙著『集客の方程式』)。このフレームは、以下の通りです。
まず、商品の広がりが、正規分布のような釣り鐘状の曲線と考えます。これをベル曲線という場合もあります。その中心は、左右の真ん中(理論上)に位置しています。そこから端に行くほど(左右)、数が減ります。末端にいくと利用者(消費者)がゼロとなります。ここで、末端にいくほど、商品であれば、非典型的、レアなものといえます。その分、アテンション(注目)は高まります。なぜなら、変わった商品だからです。人は稀なモノには意識が向くからです。しかし、それを欲しようとする人は極端に減少します。そこで、逆に、アテンションがありながらも、ある程度の人々が消費してくれる商品の点を探します。
一般の人からすると、商品の従来の概念に一致しないが、購買可能な適切性をもっているようなものです。
これは、中小企業や個人が供給可能で、No.1になれるようなニッチ商品です。ニッチでありながらも、No.1であれば、多分、利潤は最大化しているはずです。いわば、そのような商品では独占化しているともいえるからです。J・ムーアのキャズム論に出てくるニッチのような存在です。それが当たれば、その周辺の商品を次々に攻略していき、テリトリーを拡大するという方略です。
一言でいえば、「有効なニッチを発見・創造する思考」です。
「言うは易く、行うは難し」ですが、それを発見・同定しようという努力なしで、従来通りのモノを作ることこそ、いまはリスクが大きいと考えます。