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総合システム論 第11回 自然科学的思考方法

 本コラムは、主に、社会科学とくに経済学的領域の考察を進めています。

 「社会科学(Social Science)」は、科学の一種であるといえますが、「純粋科学(pure Science)」ではないともいえます。では、いかなるメルクマールで、純粋なものと近似したものを弁別するのでしょうか。それが、今回の内容です。

 「科学主義(Scientism)」は、一般的には、科学万能主義と考えられています。なんでも科学的に考えることが必要であるということは、ネガティブな用語として使われることが多いのです。が、ここでは、近代の英知の成果や潮流として、ポジティブに捉えます。そのうえで、次回、社会科学の手法の妥当性や限界を考えます。

 ここでは、科学主義を支える思考様式(傾向)を、4つで表現しようと思います。ただし、近代の科学史の中で、様々な知見や思考方法が唱えられていますので、ここでは、あくまでも大きな思考枠組みを示していることを最初にいっておきます(諸学諸説あるのは、当たり前ですから)。

 その4つとは、第一に「還元主義」で、第二に「機械主義」で、第三に「論理主義」で、第四が「実験主義」です。

 第一の「還元主義(Reductionism)」は、また「要素還元主義」とも呼ばれています。私たちの暮らしている自然環境や社会環境は、様々な要因や要素が複雑に絡み合ってできています。その複雑な事柄や事象をまるごと説明することは困難なので、全体を説明可能な単位まで細分化して、できるだけ基本的な要素に還元します。そして、その要素の仕組みや働きを知ることから科学の始まりとします。一言でいえば、まずは、全体を分割・分解し、その要素を客観的に同定するということです。

 第二は「機械主義(Mechanism)」です。デカルトの考え方をさらに徹底したもので、人間すら、機械と同様なものとみなします。どんなに複雑な機械も部品から出来ているように、人間の体も、細胞、器官の合成として考えます。ですから、機械論的世界観とも呼ばれています。組織や社会も人という主体から構成されているとみることも可能となります。

 第三は「論理主義(logicism)」です。徹底的に論理を用いて、物事や事象を説明しようという傾向をいいます。より狭い意味では、数学を論理学のひとつとみなし、数式ですべてを解釈・説明しようとする考え方です。少数の数式(定理)から、演繹的・論理的に、世界を表現しようとするのです。

 第四は「実験主義(Experimentalism)」です。この近接概念に、プラグマティズムがあり、実用主義や道具主義などといわれています。要は、実際に、実験して真理を明らかにしようという考え方です。そのためには、まずは、実験装置が必要です。つぎに、明確な基準があり、測定可能でなければなりません。そして、その発生する現象の理由を仮説設定します。統制された同じ条件下で、ある刺激のみが与えられると、まったく同じ反応・結果が実験によって得られれば、そこに因果関係があったとみなせます。この思考の延長線上に、理論的仮説と、その実証(観測)があります。

 以上をまとめると、科学的思考ないしはアプローチとは、第一に、もっとも基礎となる要素を特定し、第二に、それを機械のように組み立てられると考え、第三に、論理的思考とくに数学を用いて世界を記述し、最後に、実験や観測で証明するということです。

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