マクロ経済学第10回 貯蓄関数その2
前回は、租税を考えない貯蓄関数のモデルを考えました。
しかし、国家が存続するためには、政府が必要で、政府は「租税(tax)」を必要とします。そこで、今回は、租税を加味した貯蓄関数を導出します。
ただし、ここで使用する租税は、国民や企業への雇用保険や各種補助金などの移転支出を除いた「純租税(net tax)」を考えます。それを、ここでは、Tと表します。
さらに、「可処分所得(disposable income)」を定義します。可処分所得(Yd)は、国民所得から、さきの租税を引いたものと考えます。簡単にいえば、国民が自由に使える所得のことです。
ここで定式化をします。
Yd = Y – T ・・・・・・・・・①
C(Yd) = cYd + c0 ・・・・・②
C(Y) = c(Y – T) + c0 ・・・・③
S = Yd – C ・・・・・・・④
S = (1-c)(Y-T) – c0 ・・・・・⑤
まず、第一式は、可処分所得は、国民所得から租税を引いたものであることを表します。第二式は、ケインズ型消費関数の国民所得を、可処分所得に置き換えたものです。さらに、第三式は、租税を考慮した消費関数式です。
ここで、貯蓄関数は、第四式のようになります。さらに、第二式を第四式に代入し、さらに第一式を代入すると、第五式ができます。
租税を考慮した貯蓄関数は、国民所得から租税を引いたもの、すなわち、可処分所得(Y-T)に、(1-c)(限界貯蓄性向)をかけ、それから、基礎消費部分を引くとできあがります。
ちなみに、国民所得がゼロのとき、貯蓄関数の切片は、-(1-c)T – c0 となります。