マクロ経済学第14回 均衡予算乗数
乗数効果(multiplier effect)については、前回で定義しました。
今回は、政府支出をすべて増税で賄うときの乗数効果を考えます。
「均衡予算乗数(Equilibrium budget multiplier)」とは、追加的な政府支出(歳出)と追加の租税額(歳入)を均衡させるときの乗数のことをいいます。
ここでは、国民所得を第一式とします。ここでも、海外部門は入らないモデルです。
Yt = c(Yt – T) + c0 + G + I ・・・・・・・①
第一式のYtは、ある年度の国民所得を表し、ある年度の翌年度は、政府支出ΔGと同時に増税ΔTがおこなわれたとします。この場合の国民所得は、(Yt+1)と表します。翌年度の式を作ると第二式のようになります。
Yt+1 = c(Yt+1 – T-ΔT) +c0 + G +ΔG + I ・・・・②
第二式から第一式を引くと、第三式となります。
Yt+1 – Yt = cYt+1 – cYt – cΔT + ΔG ・・・・・・・③
さらに、まとめると、第四式となります。
(1-c)(Yt+1 – Yt) = -cΔT + ΔG ・・・・・・④
ここで、(Yt+1 – Yt)は、1年間の国民所得の増分ですから、ΔYに置き換えると、第五式となります。
(1-c)ΔY = -cΔT + ΔG ・・・・・・・・・⑤
これをさらに変形すると、
ΔY = -c/(1-c)ΔT + 1/(1-c)ΔG ・・・・⑥
ここで、均衡予算なので、
ΔT = ΔG ・・・・・・・・・・・・・・・・⑦
結論としては、
ΔY = 1・ΔG ・・・・・・・⑧
第八式の意味は、政府支出分を増税で賄った場合の乗数は、「1」となるということです。