マクロ経済学第59回 フィリップス曲線
日本の完全失業率の値はどのくらいでしょうか。総務省統計局・労働力調査によると、2018年は2.4%、2019年は2.4%と先進各国との比較ではかなり低い値といえます。ただし、2020年12月分では、疫病の世界的蔓延もあり、2.8%と高まっています。
それに対して、同統計局の調査による消費者物価指数(CPI)は、2015年基準(100として)から、2018年は101.3、2019年は101.8となっています。
この2つの要因は、下記のように、原則、トレードオフの関係にも関わらず、現在の日本では、失業率も低くかつインフレ率も低いという状況です。
その理由を考える前に、まずは基本法則を考えてみましょう。
フィリップス(A.W.H. Phillips;1914-1975)は、英国のおよそ100年間において、名目賃金率と失業率との間に、負の相関関係があることを発見しました。
この名目賃金率とインフレ率には、強い正の相関性がありますので、図表のように、インフレ率(物価上昇率)と失業率を表した場合を、物価版フィリップス曲線と呼びます。
図表を一目見て分かることは、インフレ率と失業率には、トレードオフの関係が存在していることです。
インフレ率も、失業率も、マクロ経済学的には、制御されるべき変数(目標)です。
インフレ率が高いときは、失業率は低く、逆に、インフレ率が低いときは、失業率が高いのです。
「インフレ(inflation)」とは、物価がある期間において持続的に上昇することを意味しています。その原因は、原則としていうと、好況期に、需給バランスが崩れるので、その調整のために、物価水準が上昇するということです。このような場合、労働者の賃金水準も上昇するので、失業者が減少することになります。これは上記に書いた名目賃金の上昇と失業者との関係といえます。