マクロ経済学第72回 資料編その11
今回は、総務省『情報通信白書令和2年度版』の資料から、情報通信産業の経済波及効果とGDP成長率への寄与度をみていきます。
情報通信白書は、情報経済、情報社会を考えるうえで、大変に有用かつ最新のデータ・情報を与えてくれるので、ほぼ四半世紀読ませていただいている白書です。
図表1は、情報通信産業の経済波及効果を示したものです。
図表1 主な産業部門の生産活動による経済波及効果
(左図は付加価値誘発額、右図は雇用誘発数)
上図の付加価値誘発額とは、同書によると、「産業部門に着目して、当該部門の生産活動が国内産業にもたらす経済波及効果」という考え方を採用し、それに付加価値係数をかけて計算し、雇用誘発数は、生産誘発額に雇用誘発係数をかけて計算したとのことです。
情報通信産業の付加価値誘発額(2018年)は、85.2兆円で、もっとも大きな産業部門となっています。また、2000年から徐々に上昇していることが分かります。
また、雇用誘発数(2018年)は、859万人で、商業、対個人サービス、建設部門よりすくない数です。とともに、2000年からみると、徐々に、雇用誘発数が減少していることが分かります。
この2つの指標からみると、部門としての付加価値誘発額は上昇しているものの、この部門は世界では成長著しいものなので、すこし物足りないとともに、雇用誘発数が減少していることが気になります。
図表2は、情報通信白書の実質GDP成長率の寄与をみたものです。
図表2 実質GDP成長率に対する情報通信産業の寄与
[総務省『情報通信白書令和2年度版』より引用]
2000年-2004年では、寄与は、0.2%で、全体のおよそ67%もありました。次の期は、寄与はさらに大きくなり0.3%でした。さらに次の期では、情報通信産業の寄与は0%となっており、直近の6年間は、0.2%です。
およそ20年間で、情報通信産業の平均GDP成長率は、0.18%ですが、その他産業のそれは、-0.3%です。
なお、これでは全体が分かりにくいので、主要先進国の経済成長率(市場価格ベースの値)を、IMF資料(IMF, WEO, April 2019)をもとに、経済産業省がまとめたもの(『通商白書2019年度版』)をみると、先進国平均(2017)は、2.4%に対して、日本は1.9%でした。2018年は、先進国平均が2.2%で、日本は0.8%です。さらに、世界平均は、2018年は3.6%でした。
今回の資料は、情報通信産業の重要性が分かるとともに、その他の日本産業全体の寄与度の低さが、日本経済の苦境を物語っているといえます。