マクロ経済学第76回 資料編その15
今回も総務省『情報通信白書令和2年度』の資料を使って、クラウドコンピューティングサービスについて考えます。
これは、前回のインターネット付随サービス業のひとつでした。
このサービスの射程は極めて広いので、ここで検討することとしました。
まず定義ですが、「クラウドコンピューティングサービス(Cloud Computing Service)」は、より簡単に「クラウドサービス(cloud service)」といわれており、「従来の手元のコンピュータに導入していたようなソフトウエアやデータあるいはそれらを提供するための技術基盤(サーバなど)を、インターネットなどのネットワークを通じて、必要に応じて利用者に提供するサービス」のことです(IT用語辞典(e-words)からの引用)。
また、どのような資源をサービス化したものかによって大きく3つに分けることができます。
その第一は、「SaaS(Soft as a Service)」または「ASP(Application Service Provider )」と呼ばれるもので、「特定の機能を提供するアプリケーションソフトをサービス化したもの」です。
第二は、「PaaS(Platform as Service)」で、「ソフトウエアの実行基盤であるオペレーションシステム(OS)や言語処理系が導入済みのサーバ提供をサービス化したもの」です。
第三は、「IaaS(Infrastructure as a Service)」で、「情報システムの運用基盤となるコンピュータ自体や通信回線などをサービス化したもの」です(以上3つの定義は上記用語辞典から引用)。
このように、クラウドサービスは、その内容がどんどんと拡大発展をしているのですが、同白書の別の資料では、クラウドサービスの効果について聞いたところ、「非常に効果があった」と「ある程度あった」を足すと、85.5%の企業が肯定的な回答をしています。
図表1は、そのクラウドサービスの利用内訳をしめしているものです。
図表1 クラウドサービスの利用内訳
この利用内訳をみてもいかにクラウドサービスの内容が多様化しているかがみてとれます。
もっとも利用が進んでいるのは、ファイルやデータ保管・共有ですが、データのバックアップにも利用されています。
また、様々な企業の間接・直接部門の管理にも大いに利用されています。
ただし、研究開発という項目は利用が最低となっており、ここでの利用が今後のカギになるように思います。
図表2は、クラウドサービスを利用する理由です。
図表2 クラウドサービスを利用する理由
[総務省『情報通信白書令和2年度』引用]
もっとも大きな理由は、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」で、次が、「場所、機器を選ばずに利用できる」(どこでも利用できるから)となっています。他の理由としては、やはり費用対効果が大きいということでしょう。
ここには出ていませんが、逆にクラウドサービスを利用しない理由として、そもそも必要がないとする企業もありましたが、「情報漏洩の不安」も挙げられています。
以上より、このクラウドサービスは、どんどんと利活用範囲が広がっていくと考えられますが、それを表す象徴的な言葉に、「XaaS」があります。Xのところに、様々な未知のものが入りうるということを意味しています。これは、「Xtech」のアナロジーでもあります。ここに、クラウドサービスが、様々な資源・技術・コンテンツと組み合わされて、新しいビジネスや付加価値を生み出す可能性が見出されます。
さらに、MaaSなどは、情報通信系以外での発展可能性を示唆しています。