マクロ経済学第78回 資料編その17
今回は、テレワークに関して考えてみたいと思います。
1980年に、未来学者のA・トフラーは『第三の波』のなかで、いずれは仕事場の中心は家になると喝破しました。それを「エレクトロニック・コッテージ」と呼びました。
それから、半世紀たった昨年(2020年)、感染症の世界大の蔓延で、都市封鎖や外出禁止や外出制限が発動されました。いまも一部現在進行中ですが、それによって、テレワークが一気に世界および日本中に広がりました。
それとは別に、テレワークは、この20年前から、徐々に利用が進んでいたのです。
それは、働き方改革や組織マネジメントの変革に伴ってでした。
このテレワークもいくつかのタイプがあることを図表1は示しています。
図表1 テレワークの3類型
[総務省『情報通信白書令和2年度版』より引用]
図表1では、「在宅勤務」と「サテライトオフィス勤務」と「モバイルワーク」に分類しています。ただし、この混合やさらに新しい形態も現れています。
たとえば、ワーケーションのようなものです。働きながらバケーションを楽しんだり、郊外の風光明媚な場所で平日は仕事をし、ときどき、クライアントのところにいったり、本社に出勤したりすることもあるというような働き方です。
生産施設を動かすことができない工場や、顧客の近くにある外食などは、テレワークには馴染みにくいのですが、前者では、時差出勤やフレックスまたはより自動生産化など、後者では、宅配やネット通販によって、ある程度はテレワーク化は可能でしょう。極端なアイデアでいえば、レストランで都心に本店があり、少人数の顧客はいれますが、そのほとんどは、食材の採れる地方で料理を作り、ネットで販売するということも考えられます。
どちらにしても、同じ場所(オフィス)に人が集まらなくても仕事ができるのならば、集まることのデメリットやコストを削減することはきわめて合理的判断です。問題は、テレワークによって、これまでのメリットや価値の減少がどこまであるのかということです。しかし、集つまらないほうが生産性や付加価値が上がる可能性も十分に考えられます。
これに関して、2020年以前の調査結果が図表2です。
図表2 企業のテレワークの導入目的の推移
[総務省『情報通信白書令和2年度版』より引用]
テレワークの導入目的でもっとも大きな理由は「労働生産性の向上」で、つぎが「勤務者の移動時間の短縮」でした。その他の理由もきわめて重要なものが並んでいますが、重要度は低いものとみなされていました。
そこで、2021年以降の展望を考えると、「勤務者の健康的な生活」や「非常時の事業継続」や「オフィスの削減」や「エネルギー対策」などの比重が高まるだろうと思います。と同時に、テレワークによる顧客満足度をどう向上させられるのかや、労働生産性を高めるための抜本的な働き方改革が始まると考えられます。
前回とも関係してくるのですが、このテレワークは、労働のICT化ないしはクラウドワーク化や仕事の見える化につながります。結果、働いているか働いていないか、どのような付加価値を上げているのかが、デジタル化・数値化されていくでしょう。
他の言葉でいいかえると、仕事面におけるDX化であるといえます。