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AI経済学第1回 はじめに

 2021年4月1日から、「AI経済学」というコラムタイトルで、AIやインターネット技術や広い意味でのICT資本が、社会経済にどのような影響をもたらし、どのように経済発展に寄与するのかを論じたいと思います。

 ここでは、前回の追記でも書いたように、これまでのコラムの知見をベースに、「AI経済」を分析したいと考えます。逆にいえば、情報科学やソフトウエア科学としてのAI論ではないということです。

 日本の内外にも、「AIによって未来世界はどうなるのか?」や「AIによって社会経済様式はどう変わるのか?」や「AIによって失業者があふれるのか?」やそれと連動して、「人は働かなくても食べていけるのか?」などの議論が百出しています。たいていは、未来学や社会評論やSF的評論です。

 同じようなアプローチをとってもしかたがないと思いますので、ここでは、経済学の理論に立脚した展開をしたいと考えます。もっといえば、マクロ経済学(とくに内生的経済成長モデルの援用とその発展)の射程のなかで検討したいと思います。ただし、新しいマクロ経済学は、「ミクロ経済学的に基礎付け(microeconomic foundation)」られているので、広義のミクロ経済学が中心といえるのかもしれません。

 とはいえ、AIはソフトウエア科学・技術の知的集合体(束)であり、そのロジックも少しは頭に入れる必要があると考えます。

 なお、筆者は、大学院生の頃、いまから三十数年前には、第二次AIブームでもあり、AIのプログラミングもやっていました。とくに、「エキスパートシステム(Expert System)」の研究をしておりました。その後、第二世代の限界が露呈し、AIブームは消えました。自身も知識情報システムという研究テーマを捨てました。

 しかし、今世紀の初めころに、第三次AIにつながる新理論・新アルゴリズムが研究・開発され、有効性が明らかとなり、実務世界に導入が一気に広がり、今に至っています。

 他方、インターネット技術も、上記と同じ時期に、発展を遂げたといえます。ここは経済領域の議論なので、経済・ビジネスへの応用が始まったのは、第二次AIブームが終わりかけたころからの話です。

 このインターネット(通信技術やweb技術の総称)、今後は単に、ネットと書いた場合は、これを指すとしますが、すべての人々が利用し、企業でもほぼ完全に利用するようになっているので、なんらかの経済効果は出ていると考えられます。このネットとAIがさらに、シームレスにつながり(コネクティッドして)、経済価値の自動生成化が起きつつあります。

 マクロ経済学第81回の議論を援用すると、単調な量的な経済成長から、質的転換を伴った経済成長、すなわち、経済進歩、経済発展の最中にいるといえます。

 そこで、まずは、AIそれ自体の本質や特徴および歴史的発展を記述していきたいと思います。いわば、「AI経済学」の基礎的前提の確認です。

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