第23回 リスク愛好者
前回は、期待値計算する合理人のリスク対応をみました。
今回は、確実な効用よりも、不確実な期待効用を重視する人を考えます。
世の中には、少数でしょうが、ギャンブルに人生をかける人もいるでしょう。
しかし、よく考えると、平生は、リスクを避けるような選択をしている人でも、ここ一番は、チャレンジする人もいるでしょう。挑戦や冒険のまったくない人生は、やはり寂しい気もします。ですので、リスクへの対処は、個人の一般的傾向であるとともに、個別問題で異なるといえるかもしれません。
というふうに考えると、「リスク愛好者(risk-loving person)」の気持ちもわかりますね。ちなみに、英語では、「risk-seeking」や「risk-taking」という言葉もあります。リスクを求めたり、リスクを受け入れる状況も人生のなかにはあるといえます。
起業家は、全般的にそうであるという見解も根強いですが、筆者の調査ではそうでもなさそうですね。ただし、リスクに強い傾向はありそうですが、むしろ、リスク計算ができる人という見方もあるでしょう。
図表の解説をします。
図表の曲線は、個人の効用曲線(青い曲線)を示しています。
赤線は、期待効用曲線です。
A点は所得が20で、c点は所得が40です。期待効用のB点は、30となっていますが、確実な効用を示すD点よりは上にきています。ということは、確実なD点よりも不確実なB点の方を選好しているのですから、この個人は、リスクがある方を選択しているといえます。
なので、このような個人は、すでに述べたように、リスク愛好者といわれています。
このリスクへの対応は、うまくいけば、英雄か勝利者、失敗すれば、愚か者か敗残者といわれるので、意思決定において大きな意味を持っているといえます。
まえにみたように、日本人がリスク回避者で、リスク愛好者度が低ければ、日本のなかで新しい商品や技術が生まれなくなるかもしれません。